共通通貨は維持されるているものの、各国で強まるユーロ離脱を主張する政党の力
2018年07月10日
久し振りにイタリアを訪れた。ジョセフ・スティグリッツ・コロンビア大学教授が主催する「世界経済の転換のための委員会(Commission On Global Economic Transformation – CGET)の総会がイタリアのトレント市で開催されたからだ。
「帰れソレント」等の歌でソレント市は知っていたが、一字違いのトレント市ははじめてだった。イタリア北部にあり、かつてはオーストリア・・ハンガリー帝国の一部だったという。アルプス山脈の南にあり、イタリアの都市でありながら、ドイツ的風情のある街なのだ。
中心にはブオンコンシグリア城(Buonconsiglia Castle)がある。13世紀に建設されているが、その後、16世紀・17世紀に造築されている。イタリアはオーストリア・ハンガリー帝国から1861年に独立するが、ブオンコンシグリア城はイタリア独立運動のシンボルだともされている。というのは、トレント出身のイタリア独立の闘士がこの城で処刑されたからだ。
サン・ビリジオ教会も12世紀に建設されたという。6世紀につくられたロマネスク風の寺院の上につくられていて、地下には寺院の遺跡も保存されている。教会のまわりには美しいルネッサンス風の建物が広場を中心に拡がっている。有名なネプチューンの噴水もここにつくられている。
ミラノからさらに自動車で3時間弱。東京を出発してからトレント市に着くまで20時間近くかかってしまったが、一度は訪れてもいい町なのだろう。
さて、前述したCGETの総会だが、各国から様々な分野の専門家が出席していた。
ブラジルからは元財務大臣(2016年)・元計画大臣(2015年)のネルソン・バルボリ氏。ドイツからのブンデスバンクのエコノミスト(1987~90年)でドイツの経済専門家会議(German Council of Economic Experts)のピーター・ボフィンジャー氏。アメリカからは「新しい経済思潮委員会―Institute for New Economic Thinking」議長のロブ・ジョンソン氏とニューヨーク大学教授のマイケル・スペンス氏が参加。アジアからは、元インドネシア通商大臣(2004~2011年)でインドネシア大学教授のマリ・パンゲツ氏、香港大学の教授のアンドリュー・シェン氏、それに日本からは筆者が参加した。
会議ではユーロ圏の将来や、世界の現在の貿易システムの問題点などについて議論がかわされた。ユーロという共通通貨は維持されているものの、イギリスが国民投票でユーロ圏を離脱した後、各国でユーロ離脱を主張する政党の力が強くなってきている。
イタリアではユーロ離脱を主張する五つ星運動が3月の総選挙で勝利したが、過半数はとれなかったため政治的混乱が続いている。ユーロ圏の中心であるドイツやフランスでもユーロ離脱を掲げる政党が力を増してきている。ドイツの「ドイツのための選択肢」は前回の選挙で92議席を獲得しており(下院・下院総数は709)、フランスでも離脱を主張するマリー・ルペンの政党が力を増してきている。
さすがに、今回の会議ではユーロの重要性を指摘する意見が相次いだが、見方を変えれば、これも「危機感」の表現だと言えないこともないのだろう。
世界の貿易システムも、アメリカのトランプ大統領の「アメリカ・ファースト」の政策で揺れている。
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