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トランプとG6の間の深い溝

アメリカ・ファースト貫くトランプ。予断を許さない世界の貿易レジームの展開

榊原英資 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

アメリカの通商政策に批判が噴出したG7

G7サミットの会場を去る米国のトランプ大統領(中央)=2018年6月9日、カナダ・シャルルボワ拡大G7サミットの会場を去る米国のトランプ大統領(中央)=2018年6月9日、カナダ・シャルルボワ

 さる6月8日~9日、カナダのシャルルポアでG7サミットが開催された。G7は毎年一回、G7諸国をまわる形で開かれており、2016年には日本の伊勢志摩で行なわれたことはよく知られている。今回の首脳会議は44回目。1975年に開始され以来、毎年、G7~G8を巡回して行われているのだ。

 今回の出席者はフランスのマクロン大統領、アメリカのトランプ大統領、イギリスのメイ首相、ドイツのメルケル首相、日本の安倍首相、イタリアのコンテ首相、カナダのトルドー首相の7人。また、欧州連合(EU)からトゥスク欧州理事会議長、ユンケル欧州委員会委員長も参加している。2013年まではロシアも参加していたが、2014年からは参加資格が停止されている。

 会議ではトランプ政権の強硬な通商政策に対する批判が噴出し、アメリカと6か国の亀裂が鮮明になった。1975年に始まり、自由貿易や民主主義といった共通の価値観で世界の課題に対処してきたG7だが、結束を維持することが次第に難しくなってきている。

 会議後、コミュニケが発表され、「自由で、公正で、互恵的な貿易及び投資が、経済成長及び雇用創出の主要な原動力」であることが再確認され、「ルールに基づく国際的貿易体制」の重要性を強調し、「保護守護と闘うことへのコミットメント」を改めて表明した。

 しかし、アメリカのトランプ大統領は首脳宣言を承認せず、カナダのトルドー首相が不誠実だと批判した。しかも、トランプ大統領は、シンガポールへ向かう大統領の機内からツイートし、「米市場にあふれる」自動車への関税を検討すると述べた。

次々と関税賦課に踏み切る

 衆知のように、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領は、2018年3月に鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ25%、10%の関税を課し、さらに、中国製品1300品目への関税賦課の可能性を示した。これに対し、中国はアメリカからの航空機や自動車、大豆など500億ドル(約5兆3000億円)相当の輸入品に対し、新たに25%関税を課す方針を明らかにしたのだ。

 ただ、この間、アメリカと中国は貿易協議を行っており、アメリカは中国製品への25%の追加関税を課す制度の発動を当面見合わせ、中国も報復措置を取らないとしている。

 アメリカの鉄鋼・アルミニウムの関税賦課は日本にも影響があり、アメリカに適用除外と求めているものの実現されておらず、日本政府はWTOの枠組みも活用して働き続けを強めるとしている。また、アメリカは北米自由貿易協定(NAFTA)についても再交渉に入っているが、農作物の市場関税などをめぐる隔たりは大きく、USTRのライトハウザー代表は「合意はほど遠い」との声明を出している。

 さらに、アメリカは自動車、同部品の輸入急増が「国家安全保障上の脅威」になる可能性があるとし、米通商拡大法232条に基づく調査に着手すると発表している。アメリカのメディアによると、乗用車への関税を25%引き上げる検討もしているという。もし、発動されれば、自動車の対米輸出が多い日本や欧州にとって影響は大きく、激しい貿易戦争に発展する可能性が高いという。

かつては貿易自由化を主導したが……

 アメリカは従来、 ・・・ログインして読む
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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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