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生協の命運は「宅配」が握る

生き残りをかけて「組合員の組織」から「地域社会の担い手」へ

岩崎賢一 朝日新聞バーティカルメディア・エディター

 生協の実態は「店舗の赤字」を「宅配の黒字」で補うという構造だ。

 日本生協連の16年度の全国統計によると、供給高(売上高)は、店舗の9450億円に対し、宅配は1兆7827億円。宅配のうち1兆2308億円は個配が占め、比率は年々増加傾向にある。

 パルシステムは、傘下の生協で1カ所だけ店舗を持つが、基本的には個配に特化している。つまり、店舗の赤字補てんを気にしないで、新たな事業に収益をつぎ込める。経営の自由度が高く、利用者のライフスタイルに合わせるような投資も欠かさない。

 例えば、生協の場合、配送員が注文をしない組合員にカタログを届けている。しかし、パルシステムでは15年にスマートフォンで注文できるアプリ「タベソダ」をつくった。現在、組合員のうち6万人が登録。「紙のカタログを見たくない世帯」「ネット通販に慣れている世代」に向けた改革で、これを拡大していく方針だ。

 15年には、高齢者などに向けて掲載商品数約330品目、24ページに絞って注文票と一体化したカタログ「きなりセレクト」を新設した。

 17年からは、外部企業の検索エンジンを利用し、組合員ごとに配るOCRの注文票に、過去の利用履歴などを参考にしてAIが選んだ5つのおすすめ商品を提示するようにした。

 カタログの工夫は今後も進めるという。現在は200ページにもなるカタログだが、1冊のコストは約200円強。これを60~70ページに圧縮できれば70~80円に抑えられる。

 最終的には、カタログの個別化を図りたいとしている。

 石田理事長は「できるだけ、その組合員に必要な商品情報だけを集めて、カタログ提供する。つまり、『○○さんのことを考えたカタログ』を実現していきたい」と話す。

拡大パルシステム連合会が高齢者向けに商品数を絞り、注文票を一体化したカタログ。トップは好評のお料理セットだ

宅配の人手不足がアキレス腱

 ただし、他の生協が簡単に追随できるわけではない。一般的に生協の目標とする経常剰余率は2%とされてきたが、全国平均で見ると店舗が1.5%の赤字に対し、3%の黒字を出す宅配が補ってきた。

 「生命線」と言われてきた宅配が今後、リスク要因になりかねないと見られているのだ。

 日本生協連政策企画室の小熊竹彦室長は「生協のメインの宅配は、競争相手がいなくて成長してきたが、今は本格的な競争時代に入っている。配送業者の取り合いも起きている。手を打たなければ20年代半ばに経営が厳しくなる地域生協もでてくる」と危機感を募らせている。人手を確保するために人件費や委託物件費が上昇傾向にあるのだ。

「生協は元々賃金水準が低く、人が辞めていく。その穴埋めに、本部職員を配送や店舗に回す地域生協もでてきた。組合員の加入を勧める職員も配送に回っている。配送の人手不足が経営を圧迫する要因になっている」と小熊室長は分析する。

 この人手不足による逆風は、2~3年前から吹き始めたという。

 全国の生協職員の6割強が非正規職員だ。配達などの業務委託先の人件費問題もある。地域の中小運送会社に業務委託して配送している生協も多く、業務委託が5割以上を占めるところもある。「生協の事業を担う人材確保が最大の課題」と、小熊室長は言う。

 パルシステムは配送車の台数ベースで85%を委託している(うち6割が子会社)が、「委託費の単価は他の生協に比べて高いのではないか」(石田理事長)。店舗の赤字を埋める必要がなく、業務改善が進み、組合員の利用高も高いからだ。マーケティングや事業戦略が功を奏しているとも言える。さらに委託先にもドライバーの社員化(契約社員含む)を求めている。また子会社の配送スタッフでもスキルが高い人材はパルシステムの正職員として登用する道も開いた。

「配送の仕事は汗をかくし、筋力も使う。だから昔は若い人が前提で、一定期間で辞めていく人の循環があった。しかし、給料が上がらないと家族も持てない。パルシステムでは、今は女性でも働けて一生続けられるような職場づくりをしている」(石田理事長)

「時短」「簡便」でネットスーパー急成長

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筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞バーティカルメディア・エディター

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当、オピニオン編集部「論座」編集を担当を経て、2020年4月からメディアデザインセンターのバーティカルメディア・エディター。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

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