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税金とは investment(投資)だ

北欧モデルは徹底した情報公開による「信頼」の上に成り立っている

伊藤裕香子  朝日新聞論説委員

 ちなみに、日本の国税庁は「税金は社会を支える会費のようなもの」(税の学習コーナー入門編)と位置づけている。

 スウェーデンで多かった答えが「investment(投資)」だ。「社会に対する補助」「将来への貯蓄」「セーフティーネットのため」「みなが平等に恩恵を得るもの」など、表現は違うが趣旨は変わらない。ほとんどの人が、考え込むことなく答えた。

 ストックホルム市郊外の図書館に、3歳の娘と来ていたウッラマリーさん(37)は「税金は、社会福祉のために使われるもの。当然のこととして、人が平等に生活できるためのものかな。それにしても、いい質問だわ」と話した。安心して子育てができるし、税金を払っていれば不安にならずに済むそうだ。

 バスの女性運転手のソフィアさん(40)は「医療や学校に使われ、その分自己負担が要らないから、やっぱり投資かな。少し高過ぎるけど、払う価値はあると思う」と、発車までの待ち時間に答えてくれた。

拡大税金の取材に応じてくれたエラさん。「スウェーデンの目標は、平等、均等に可能性を得ること」と教えてくれた
 この秋からスウェーデン王立工科大学に入学するエラさん(21)が「自分だけでなく、家族や子ども、社会全体に対しての投資」と考えるようになったのは、オーストラリアに留学した際、学費として約10万クローネ(約130万円)を払ったことが原点にある。それまで国内では学費が無料だった分、「では、納めた税金は何に使われているのか」「本当に平等なのか」といったことに、自然と関心が向かったという。「自分で稼いだお金は、もっと自分のために使いたいと思いませんか?」と尋ねると、「明日、私が病気になっても、ある程度の治療は受けられる安心感があります。だから、税金を払うことには価値があると思う」と返ってきた。

 そこで「日本では『税金は払わないほうが得』と思う人が、結構いるかも」と話を向けてみると、笑い出し、「では、何に使うの?」「税金を払わないなら、何で社会保障や教育のお金をまかなうの?」と、続けざまに日本の状況を聞き返してきた。

「税金をとられる」には不思議な顔


筆者

伊藤裕香子

伊藤裕香子 (いとう・ゆかこ) 朝日新聞論説委員

1995年朝日新聞社に入社。静岡支局、盛岡支局、経済部、オピニオン編集部などを経て、2018年7月から論説委員。著書に「消費税日記 検証増税786日の攻防」。北欧では取材の合間にレンガづくりの教会を回り、その美しさに魅了された。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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