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北欧モデルを支える政治参加

不安を安心へ。若い力で政治をchange(変える)

伊藤裕香子  朝日新聞論説委員

 移民も多いヤルバ地区の会場は、最寄り駅から歩いて15分ほど。この日は、1週間続く集会の最終日。セキュリティーチェックもない入口に、エリクソンなどスポンサー企業の名前とロゴが並んだ門が立っていた。

 「ようこそ!」。そう声をかけられ、次々にチラシやバッグが渡され、あっという間に両手がふさがった。赤い風船が用意され、コーヒーやホットドッグコーナーも。ベビーカーを押した親子や駆け回る子どもたち。お祭りにやってきた家族連れといった雰囲気だ。

 会場の奥へ進むと、テントを張ったブースで熱のこもった討論会が続いていた。「治安」「移民」などのテーマに分かれ、用意された席はほぼいっぱい。質問も飛んでいる。前の方で意見を発表する人たちも、各地から来た一般の人たちだという。

拡大警察官も国民の1人。政治集会では登壇者にもなる
 治安の悪化はこのところ国民の関心が高いらしい。警察官の増員を求める声が強まっている。警備の人かと思ったが、「POLIS」のジャケットを着た警察官自身が壇上に上がり、意見を述べていた。

 与党の社会民主労働党系の公務員労働組合、コミュナールの議長を務めるトビアス・ボディーンさんが「ここは、政治家と一般の人たちの出会いの場。民主主義を決めていく選挙において、重要な接点です」と説明する。A4判の用紙を二つ折りにしたチラシには「社会福祉にもっと資源や予算を割くか」「行政サービスの民間委託の利潤にストップをかけるか」などと、争点となりそうな政策の主張を、党派ごとに「Ja(Yes)」なら緑、「Nej(No)」なら赤で色分けしてあった。

 夕刻、にわかに空が曇り、強い雨が降り始めた。各政党がシンボルカラーのビニールでできた簡易レインコートを配る。赤、ブルー、オレンジ、透明のもの…。はおると、まるでその党の支持者のようだ。午後7時、首相が演説を始める直前に雨はやんだ。会場を見渡すと300人から400人はいるだろうか、けっこう埋め尽くされていた。

「社会の格差を取り除こう」「税金は引き下げないが、福祉は強化する」

 具体的な政策論はあまりなく、演説は45分ほど。途中で帰った人もいたが、首相支持派だけでなく、反対派の人たちもプラカードを掲げて粘り強く聞いている。

将来不安、人手不足…日本と同じ


筆者

伊藤裕香子

伊藤裕香子 (いとう・ゆかこ) 朝日新聞論説委員

1995年朝日新聞社に入社。静岡支局、盛岡支局、経済部、オピニオン編集部などを経て、2018年7月から論説委員。著書に「消費税日記 検証増税786日の攻防」。北欧では取材の合間にレンガづくりの教会を回り、その美しさに魅了された。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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