メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

孫社長のリークを、日経はそのまま載せた

ソフトバンク元広報責任者が明かす孫氏のマスコミ操縦術

大鹿靖明 朝日新聞経済部記者

 近年でその代表的なケースは、孫氏が三顧の礼をもって迎え入れたインド出身のニケシュ・アローラ氏の退任報道だったように思われる。

 日経は2016年6月21日、孫、アローラ両氏のインタビューをとり、翌22日に「ソフトバンク、『後継』アローラ氏退任、孫氏、禅譲撤回、社長交代時期、認識ずれ」と一面で報じた。関連の解説記事を三面に展開し、両氏の一問一答も掲載する手厚い報道ぶりだった。

 しかし、この報道には解せないところがあった。

 孫氏は、グーグルに在籍していたアローラ氏を一目惚れのような格好で入れ込み、巨額の報酬を約束し、スカウトした。孫氏は15年10月のイベント「ソフトバンクアカデミア」で、「後継者として指名したニケシュを皆さんに紹介したい」と切り出し、「僕は若いときに10年ごとの目標を作った。20代で存在を示し、30代で資金を作り(中略)、60代でバトンタッチをする」と言及。そのうえで「これから2人でやっていきたい。後継者を見つけた喜びでいっぱい」などと、端から見ていて気恥ずかしくなるほどベタ惚れだった。16年6月22日の株主総会ではアローラ氏の副社長再任の人事案が上程される予定で、株主への招集通知にはその旨が記載されていた。その総会当日の日経にこんな記事が載ったわけだ。

 このときの日経によると、株主総会を控えた6月初めに突如、孫氏が「ニケシュ、すまないけど僕はまだ社長を続けたいんだ」と豹変し、「ニケシュほどの人材をいつまでもバッターボックスの手前で待たせる訳にはいかない」と告げ、アローラ氏は「新たな道を行く」と答えた、ということになっている。

 孫氏はこのときの日経のインタビューで「60歳で引退と決めていたが、いざその時期が近づくとやっぱりもうちょっとやっていきたいという欲望が出た」と語っている。にわかには信じがたい言い分である。はっきり言って、真相を隠したいが故の孫氏流のプロパガンダの一種だろう。

 元広報責任者が「こっちの言いたいことをそのまま、きちんと載せてくれる」という日経は、そのお先棒を担がされたのだ。

真相は醜悪なスキャンダルだった

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

大鹿靖明

大鹿靖明(おおしか・やすあき) 朝日新聞経済部記者

1965年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。88年、朝日新聞社入社。アエラ編集部などを経て現在、経済部記者。著書に第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』を始め、『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』、『ヒルズ黙示録・最終章』、『堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産』、『ジャーナリズムの現場から』がある。近著に『東芝の悲劇』。キング・クリムゾンに強い影響を受ける。

大鹿靖明の記事

もっと見る