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巨大バブル崩壊の足音

いま世界発の経済危機が起きたら、日銀には何の方策もない

原真人 朝日新聞 編集委員

「いまの米国は史上まれに見る大バブルです。崩壊は時間の問題。いつ起きてもおかしくない」と言うのは中前国際経済研究所の中前忠代表だ。

 中前氏は1990年代初頭の日本のバブル崩壊をいち早く見抜いたエコノミスト。当時、日本経済ではバブルのピークを通り過ぎ、崩壊が始まりつつあったが、まだ「バブル」という言葉さえ定着していなかった。バブル崩壊どころか、バブル経済だったという認識さえ日本人の多くにはなかったころである。

 その中前氏は1990年3月、日本経済が好調とされるのは「実はバブルにすぎない」「日没は時間の問題」と本紙インタビューで答えている。

 中前氏がいま着目するのは米国の株や不動産などの純資産額の異常な跳ね上がりだ。家計の純資産額が家計の可処分所得に対して何倍あるかを比べると、1990年代半ばまではせいぜい5倍ほどだった。ところが2000年前後のITバブルで6倍強まで上昇し、はじけた。その後、再び住宅バブルで6.5倍に上昇。リーマン・ショックで急低下して、5倍に戻った。ところが直近では6.8倍ほどに跳ね上がっている。

 データが示すものは住宅価格や株価の上昇によって、異常なレベルまで家計の資産価格がふくらんでいる実情である。過去の例を参考にするなら、いつ崩壊が起きてもおかしくない高みに指数はある。中前氏はこれを指して「史上まれに見る大バブル」と指摘するのだ。

山高ければ谷深し

 同じように、世界レベルのバブル崩壊を示唆するデータも他にある。世界の株式時価総額と世界GDP(国内総生産)との比較だ。

 近年で株式時価総額が世界GDPを超えたのは、ITバブルのときと、リーマン・ショック直前だった。いずれもその後、株価下落があって時価総額は大きく下げた。そして最近、再びその逆転が起きている。三菱総研の調べによると、世界GDPは約80兆ドルで、株式時価総額がそれを少し上回る80兆ドル超となっている。

 また、BNPパリバ証券の分析によると、OECD(経済協力開発機構)加盟の先進23カ国のうち、名目成長率が長期金利を上回る国の比率も、バブルの存在を示している。通常はこの比率が50%ほどだが、ITバブルのときは75%、住宅バブルのときは85%ほどとなり、はじけた。いまそれは90%超となっている。

 山高ければ谷深し。繰り返し起きる歴史の必然なのだろう。

中央銀行の金融緩和が崩壊ショックを大きくした


筆者

原真人

原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員

1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。コラム「多事奏論」を執筆中。著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)。共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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