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日米FTA交渉を避ける道はないのか?

牛肉か車かのジレンマから脱出する方法を探る

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 自動車については、トランプ大統領とユンケル欧州委員会委員長の間の合意で、米EU間で関税撤廃交渉を行っている間は高い自動車関税は適用されないことが合意されている。このため、鉄鋼の関税引き上げの場合と同じように、交渉中のEUには高い関税が適用されず、日本に高い関税が適用されてしまう(現在はEUにも高い鉄鋼関税が適用)という心配があった。

 12日付朝日新聞は「日本政府関係者は『9月に首脳間で合意し、具体的交渉に入れば、交渉中の関税凍結を勝ち取れる』と期待を寄せる」と報じている。しかし、この日本政府関係者の発言は日米FTA交渉回避という主張と矛盾している。(米EU間で関税撤廃交渉を行い、その成果をWTO加盟国全てに及ぼすという利他的な場合でない限り)米EU相互の間で関税を撤廃しようとすると、それは自由貿易協定交渉を行うことに他ならない。米EUには、中断中のTTIP交渉があり、これを再開することになる。

 同じように、日本政府関係者の言う”交渉”も、論理的に言うと日米FTA交渉に他ならない。その場合、日本の工業品の関税は既に撤廃されているものが多く、トランプが重視する”reciprocal”(互恵的な)交渉成果となるためには、牛肉関税を引き下げるしかない。それがTPPでアメリカに譲歩したところで終わる保証は何もない。

 アメリカが自動車関税を日本に適用してしまった後でも、日本がこれを撤回しようとすると、農産物等での譲歩を差し出すしかない。高い自動車関税を避けようとすれば、このような内容となる日米FTA交渉に応じるしかないことになる。

 今のままでは、牛肉と自動車がバーターになりかねない状況である。

米国の「最大の敵」は中国だ

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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