「GENサミット」報告(上)―「敵でもあり友人でもある両者」の未来は?
2018年08月15日
GENはGlobal Editors Networkの略で、2011年に創設。世界中の約6000のメディア及びテクノロジー企業の編集・経営幹部らを中心とする集まりで、ニュースの編集室のデジタル改革を進めることを目的とする。
毎年開催されるGENサミットだが、今年は70カ国以上からやってきた約840人が参加した。
「友人であり敵:ジャーナリズムの中心部にいるプラットフォーム・プレス」と題された報告書は、タウ・センターがテクノロジー大手とジャーナリズムの関係を考えるために行ってきた調査の一環として作成された。米国とカナダの1025の編集室で働くジャーナリストから2年をかけて情報を収集した。調査に参加したジャーナリストのうち、94%は地方メディアで働いている。
ベル氏によると、近年、フェイスブック、グーグル、ツイッターなどのプラットフォーマーとニュースを発見・拡散してもらうためにプラットフォーマーに依存せざるを得ないニュースメディアとの力関係に変化が見えてきたという。
きっかけは「調査報道や学者の研究」だ。
例えば、バズフィードのクレイグ・シルバーマン氏が2016年の米大統領選挙においてソーシャル・メディアを通じていかにフェイクニュースが拡散されたかを指摘し、タウ・センターのジョナサン・オルブライト教授がユーチューブでの拡散結果を研究した。また、英オブザーバー紙が英選挙コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカによる、フェイスブックの利用者の個人情報不正取得を暴露した。
一連の動きによって、プラットフォーマー、特にフェイスブックに対する視線は激変した。
変化が明確に可視化されたのが、今年4月、フェイクニュース拡散やケンブリッジ・アナリティカ事件の責任を問われたフェイスブックのザッカーバーグ最高経営責任者が米上下院に召喚され、議員らから質問を受けた時だ。5月にはザッカーバーグ氏は欧州議会を訪れ、個人情報の不正利用やフェイクニュースの広がりについて謝罪した。
ベル氏によると、現在、ニュースメディアがプラットフォームとの間に一定の距離を置く「分離(decoupling)」現象が起きている。ただし、プラットフォーム側に出すコンテンツの分量を減らしているわけではない。両者の関係は「成熟化した」という。
この現象を詳しく見る前に、まず、プラットフォームによってどれほど編集室の現場が変わったかに注目すると、調査に参加した編集室の41%が「ソーシャルメディア・プラットフォームが普及したために、ニュースの編集過程を大幅変更した」と答えている。「小幅変更」は42%で、これも入れるとほとんどの編集室で改変があったことになる。
プラットフォームの脆弱性(例えばフェイクニュースの拡散)が指摘された後でも、編集室の半数がプラットフォームを編集過程に組み入れたことで「オーディエンスとの関係が強化された」、と一定の評価を下している。
それでも、メディア側のプラットフォームに対する不信感は強い。86%が「ソーシャル・メディアはジャーナリズムに対する信頼感の下落をもたらした」と答えているからだ。
「実際にそうだったかどうかは別問題。ジャーナリストの側はそう認識している、ということだ」(ベル氏)。
また、76%がフェイスブックは「フェイクニュースや誤情報を撲滅するために十分な対策を取っていない」と見ている。ツイッターの場合はこれが71%、グーグルに対しては65%に下がる。
プラットフォームから財政支援を求める声も高い。56%がジャーナリズムに財政支援をするべき、と見ている。
プラットフォームに対する不信感は高いものの、利用率が低くなっているわけではない。
しかし、ニュースメディアはインスタグラム、フェイスブックの「インスタント・アーティクルズ」(フェイスブックのアプリ上で記事すべてが読めるサービス)、アップルニュースの無料版など、プラットフォーム上ですべてが消費される形を避けるようになっている。代わりに、自社のウェブサイトに読者を呼び寄せる形での関わりに力を入れるようになっているという。これを報告書は「意識的な分離」と名付けた。
ニュースメディアの規模によってプラットフォームの使い方は変わる。
大手12社(CNN,フォックス・ニュース、ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、バズフィード、ハフィントンポストなど)は幅広い種類のプラットフォームに記事を出しているが、リソースが少ない小規模のニュースメディアは
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