メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

米メディアとプラットフォームの関係は「成熟化」

「GENサミット」報告(上)―「敵でもあり友人でもある両者」の未来は?

小林恭子 在英ジャーナリスト

拡大GENサミットで基調講演を行うベル氏(撮影 GEN Summit)(全景)
 テクノロジーの発展とともに、私たちがニュースに触れる環境が激変している。メディア業界とテクノロジー業界の編集幹部らが現在および将来の課題について議論する「GEN(ジェン)サミット」が、5月30日から6月1日までポルトガル・リスボンで開催された。その模様を2回にわたって紹介する。

 GENはGlobal Editors Networkの略で、2011年に創設。世界中の約6000のメディア及びテクノロジー企業の編集・経営幹部らを中心とする集まりで、ニュースの編集室のデジタル改革を進めることを目的とする。

Global Editors Network

 毎年開催されるGENサミットだが、今年は70カ国以上からやってきた約840人が参加した。

ニュースメディアはプラットフォーマーに距離を置く傾向

拡大GENサミットで基調講演を行うベル氏(撮影 GEN Summit)
 5月31日、サミットの基調講演の1つとして、米コロンビア大学のジャーナリズム大学院に設置されている「タウ・センター・フォー・デジタル・ジャーナリズム」所長エミリー・ベル氏が報告書を紹介した。

 「友人であり敵:ジャーナリズムの中心部にいるプラットフォーム・プレス」と題された報告書は、タウ・センターがテクノロジー大手とジャーナリズムの関係を考えるために行ってきた調査の一環として作成された。米国とカナダの1025の編集室で働くジャーナリストから2年をかけて情報を収集した。調査に参加したジャーナリストのうち、94%は地方メディアで働いている。

 ベル氏によると、近年、フェイスブック、グーグル、ツイッターなどのプラットフォーマーとニュースを発見・拡散してもらうためにプラットフォーマーに依存せざるを得ないニュースメディアとの力関係に変化が見えてきたという。

 きっかけは「調査報道や学者の研究」だ。

 例えば、バズフィードのクレイグ・シルバーマン氏が2016年の米大統領選挙においてソーシャル・メディアを通じていかにフェイクニュースが拡散されたかを指摘し、タウ・センターのジョナサン・オルブライト教授がユーチューブでの拡散結果を研究した。また、英オブザーバー紙が英選挙コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカによる、フェイスブックの利用者の個人情報不正取得を暴露した。

 一連の動きによって、プラットフォーマー、特にフェイスブックに対する視線は激変した。

 変化が明確に可視化されたのが、今年4月、フェイクニュース拡散やケンブリッジ・アナリティカ事件の責任を問われたフェイスブックのザッカーバーグ最高経営責任者が米上下院に召喚され、議員らから質問を受けた時だ。5月にはザッカーバーグ氏は欧州議会を訪れ、個人情報の不正利用やフェイクニュースの広がりについて謝罪した。

 ベル氏によると、現在、ニュースメディアがプラットフォームとの間に一定の距離を置く「分離(decoupling)」現象が起きている。ただし、プラットフォーム側に出すコンテンツの分量を減らしているわけではない。両者の関係は「成熟化した」という。

86%が「ソーシャル・メディアが信頼感を下落させた」と見る

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

小林恭子

小林恭子(こばやし・ぎんこ) 在英ジャーナリスト

秋田県生まれ。1981年、成城大学文芸学部芸術学科卒業(映画専攻)。外資系金融機関勤務後、「デイリー・ヨミウリ」(現「ジャパン・ニューズ」)記者・編集者を経て、2002年に渡英。英国や欧州のメディア事情や政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。「新聞研究」(日本新聞協会)、「Galac」(放送批評懇談会)、「メディア展望』(新聞通信調査会)などにメディア評を連載。著書に『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス(新書)』(共著、洋泉社)、『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)。

小林恭子の新着記事

もっと見る