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新興国で進むドローンの活用

人道支援から鉄道監視まで幅広く、経済発展につながる期待も

佐藤仁 学術研究員/ジャーナリスト

 現在、新興国でもドローンの活用が多く進んでいる。まだ試験段階のものが多いが、これから実用化に向けての対応が進められようとしている。本稿では新興国でのドローンを活用した取組をいくつか紹介していきたい。

インドでは鉄道監視にドローン活用へ

IITの施設を借りてドローンの会社をつくった人たち=インド・ムンバイ
 日本では時間通りに正確に鉄道が運行されるが、インドでは決してそうではない。インドでは2017年から現在までに、既に54件の鉄道の脱線事故が発生している。2016年には78件だった。2016年から2017年までには607人が鉄道事故で怪我や死亡しており、鉄道の安全かつ正確な運行が課題になっている。またインドでは線路に多くの人が住んでおり、電車が来た時に線路から移動する人も多い。さらに電車が象などの動物をはねてしまう事故なども多発している。

 そこで、2018年7月にはインド工科大学(IIT:Indian Institute of Technology)ルールキー校が、インドの鉄道と電車・線路の監視用のドローンを開発していることを明らかにした。ウッタラーカンド州でドローンを活用した鉄道のトラッキングの試験を行っている。現在は人間の目での監視を行っている業務をドローンに置き換える予定だ。

 ドローンでリアルタイムに上空から監視し、鉄道の運行状況のデータを収集し、それらのデータを解析して、鉄道の効率的で安全な運用を目指していく。インド鉄道のスポークスマンのRD Bajpai氏は「ドローンで多くの写真やデータが収集できる。電車の安全な運行や事故防止のために人工知能(AI)も活用していきたい」と語っている。IITルールキー校のDharmendra Singh氏は「ドローンによる鉄道の監視は人間がチェックするよりも、コストパフォーマンスも良い」とコメントしている。

 ドローンでリアルタイムに様々な鉄道の運行状況や線路の状態などに関する情報が収集され、鉄道が安全で時間通りの運行ができるように期待されている。

アフリカでは人道支援目的でのドローン利用も

 アフリカのマラウイ政府とユニセフは、2017年6月にドローンによる人道支援利用の可能性を試験するために開設された飛行ルートの運用を開始した。アフリカ初のドローンの飛行ルートで、人道支援・開発支援の利用に特化したルートとしては世界初の試みだ。

 人道目的のドローン飛行ルートは、主に以下の3つの分野における検証を実施した。まず洪水や地震発生時の状況モニタリングなど開発支援や人道危機対応のための航空画像・映像の撮影や分析。2つ目が緊急事態発生時に、通信が困難な地域において、ドローンによるWi-Fi/携帯電話の電波増幅の可能性の検証。3つ目が小型で軽量の物資、 例えば緊急用の医療物資、ワクチン、HIV感染検査用の血液などのドローンによる輸送の検証が行われた。

 ユニセフのマラウイでのドローン試験は長く続けられてきた。2016年3月には、乳児のHIV感染の早期検査を実施するために、ドローンで乾燥させた血液サンプルを輸送するフィージビリティ・スタディが行われた。またマラウイ政府による洪水被害対応を支援するためにもドローンの人道的利用を実施。2017年2月から4月にかけて、被災した人々のニーズ調査のため、ドローンによる空撮を実施。被災したコミュニティや家族たちの状況をより迅速で、より効率的に、費用対効果が高く調査するためにドローンを活用。ユニセフでは緊急の捜索や救出活動を支援するドローン利用の可能性も模索している。

 マラウィのジャッピー・ムハンゴ運輸・公共事業大臣は

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