小此木潔(おこのぎ・きよし) ジャーナリスト、元上智大学教授
群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。経済部員、ニューヨーク支局員などを経て、論説委員、編集委員を務めた。2014~22年3月、上智大学教授(政策ジャーナリズム論)。著書に『財政構造改革』『消費税をどうするか』(いずれも岩波新書)、『デフレ論争のABC』(岩波ブックレット)など。監訳書に『危機と決断―バーナンキ回顧録』(角川書店)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
日本は諸国と協力して、米中歩み寄りの道を探れ
米国内では昨年来、「アメリカ・ファースト」の見地から、北の大陸間弾道ミサイル(ICBM)が未完成な今のうちなら、北の核兵器を破壊するための限定的な先制攻撃や「予防的戦争」をもためらうべきではないといわんばかりの過激な意見すらネット上に目立っていた。米国民を対象にした世論調査でも、米朝首脳会談前は「北との戦争もやむをえない」と答える人が少なからずいた。
たとえばCNNテレビが米朝首脳会談直後の6月に実施した世論調査では52%が「会談に満足している」と回答したが、昨年8月の同テレビの調査では50%が対北軍事行動を支持していたのである。このことはおそらく、北朝鮮と米国の軍事衝突や戦争で韓国や日本にどんな被害が出るかよく知らない米国民が多いことを物語っているのだろう。だから米朝交渉の行方次第では米世論が一転して再び軍事行動支持に傾かないとも限らないのである。
北朝鮮問題の研究で知られる米ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは昨秋、北朝鮮がソウルと東京を核ミサイルで攻撃した場合のシミュレーションを発表し、最悪の場合には死者が210万人にのぼる可能性があると指摘した。残念なことに、こうした危険は日本でも米国でもあまり認識されていないようだ。このため、強硬論がぶり返しかねない土壌があるのではないだろうか。
トランプ政権が北を甘く見て先制攻撃を仕掛けた場合、北朝鮮が核を用いず通常兵器だけで反撃するとしても相当な被害が韓国に出るであろうことは容易に想像がつく。そのことはシンガポールでの米朝首脳会談後にトランプ大統領も記者会見で示唆している。もしも北が核を用いて反撃すれば、
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