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アメリカは米中貿易戦争を早く終わらせたい

最も被害を受けるのはアメリカだ。このままではトランプの再選が危うくなる

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

拡大トランプ大統領=2018年7月30日、ワシントン
 前回記事「米中貿易戦争、トランプが設けた高すぎるハードル」で、米中貿易戦争は簡単には収らないという見通しを示した。それなら、なぜアメリカは中国商務省の交渉団を受け入れたのか?

 アメリカとして早くこの貿易戦争を終わりにしたいという事情や思惑があったと推測される。

 それは、大豆の輸出を巡る動きである。トランプ大統領は1.3兆円の農業救済対策を発表した際、農民団体を前にして「しばらく我慢してくれ。高い関税をかけることで相手国に譲歩させ、よりよい条件の市場を獲得するから」と主張した。

 問題は、果たして彼の思うように事態が進むかだ。

中国は大豆の関税引き上げで被害を受けるのか?

 8月14日付日本経済新聞コモディティーVIEWは「大豆巡る摩擦、米国より中国に不都合な事情」と題して、「大豆に限れば中国側の旗色が悪いとの見方が優勢になっているようだ」という見方を示している。

 この記事は、中国ではアメリカ産大豆の代わりに輸入が増加しているブラジル産大豆の価格が上昇し、「(大豆を飼料として使用する)豚肉価格に波及し、国民の不満を招きかねない。豚肉そのものの輸入を増やせば飼料需要を抑えられるが、中国はその豚肉も制裁関税の対象としている」と指摘。中国は大量のアメリカ産大豆をブラジル産だけでは代替できずアメリカ産を買わざるを得ないと分析したうえ、アメリカにとっては欧州諸国によるアメリカ産大豆の買い付けが急増するなどアメリカ産の価格低下のメリットも目立つとし、「それに比べ、南米産の高騰や供給不足といった中国側の不安が大きいのは否めない。自ら切った輸入関税というカードがもたらす副作用に耐えられるのか」と述べている。

 目先の商売に目を奪われている市場関係者の声だけ聞くと、このような結論にたどりつくのもやむを得ないかもしれない。この記事を批判的に検証しながら、アメリカと中国のいずれかに影響が出るのか、分析してみよう。

アメリカの大豆輸出は大幅に減少する

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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