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世論調査が映す「9条改憲」へのとまどい

乏しい判断材料、国民の理解は得られていない

小此木潔 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

 日本国憲法第9条に自衛隊を明記するという安倍晋三首相の「9条改憲」案について、国民の理解は得られていない。さまざまな世論調査から、それは明らかであり、石破茂・元自民党幹事長も指摘する通りだ。自衛隊明記で何がどう変わりうるのかという肝心の点を含めて、丁寧な説明や掘り下げた議論がないため、有権者は判断に必要な知識や情報が得られずとまどっているようだ。こんな現状を無視して国会が改憲の発議を急ぐとしたら、国民を分断し混乱に陥れるだけでなく、後世に禍根を残すことになるだろう。

 昨年の総選挙で改憲を公約に掲げた自民党が圧勝したが、9条改憲については反対が根強い。その半面、社会保障など身近な問題に強い不安を抱き、政策による解決を求めていることも度重なる世論調査で明らかになっている。政治はこうした国民意識のありようと政策の優先順位を冷静に見つめ直さねばならないし、自民党総裁選でも、大いに議論されるべきだ。

質問次第で回答に微妙な違い

拡大憲法記念日の護憲派の集会で「9条改憲NO!」のプレートを掲げる参加者=5月3日、甲府市
 今年3月から4月にかけて共同通信が郵送方式で実施した「憲法に関する世論調査」(有効回答1922)では、9条改憲に関して矛盾しているようにも見える有権者の回答が示された。

 「あなたは戦争放棄や戦力の不保持を定めた憲法9条を改正する必要があると思いますか、改正する必要はないと思いますか」という質問に対して「改正する必要がある」との回答は44%、「改正する必要はない」は46%だった(無回答10%)。拮抗しているなかで、9条改憲反対がわずかに多い。

 だがこのあと、「憲法9条は第2項で陸海空軍その他の戦力の不保持と交戦権の否認を定めています。安倍晋三首相はこの規定を維持しつつ、9条に自衛隊の存在を書き加えることを提案しています。あなたはどう思いますか」という問いには、「9条の第2項を維持して、自衛隊の存在を明記する」40%、「9条の第2項を削除した上で、自衛隊の目的、性格を明確にする」28%、「9条に自衛隊を明記する必要はない」29%、という回答だった(他に無回答3%)。

 第2項維持か削除かは別として自衛隊を書き加えることに賛成する人は半数を超えているように見える。すなわち単に自衛隊を書き加えるだけなら9条改憲といってもさほど問題ないかもしれないから反対しないという人も少なくないのかもしれない。また、質問には自衛隊明記が改憲案であるとの表現がないため改憲ではないと受け取られている可能性もありそうだ。ここでは選択肢が3つ置かれているため、回答が分散しがちになっている可能性もある。首相は2項の削除を求めていないのだから、2項維持のうえで自衛隊を明記する案について賛否を問う質問にしたら、結果はどうだったか。

9条改憲反対でも自衛隊明記なら…?

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筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

上智大学教授。群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。富山、奈良、大阪、ニューヨーク、静岡、東京で記者をしてきた。近年は日本の経済政策や世界金融危機など取材。2009年5月から東京本社論説委員室勤務、11年4月からは編集委員も務め、14年4月から現職。著書に「財政構造改革」「消費税をどうするか」(いずれも岩波新書)、「デフレ論争のABC」(岩波ブックレット)。

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