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トランプのNAFTA見直しで何が変わるのか

米国の雇用は拡大しない。日本の自動車メーカーに不利はない

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 各紙の報道は、メキシコで製造しアメリカに関税なしで輸出してきた企業は、アメリカからの部品調達比率を大幅に高めるか、それが難しければ2.5%の関税を払ってアメリカに輸出しなければならなくなるというものだ。もし、カナダとアメリカが合意しなければ、カナダからアメリカへの輸出には一律2.5%の関税がかかることになる。

 現在の貿易は、2017年アメリカでの自動車総販売1758万台(うち日本車670万台)、このうちメキシコからアメリカへの輸出270万台(うち日本車69万台)、カナダからアメリカへの輸出189万台(うち日本車77万台)となっている(8月29日付日本経済新聞による)。

 メキシコに進出した日本の企業の方が、アメリカ企業よりもアメリカ産の部品の調達率は低いだろうから、今回の見直しで、より大きな影響を被ることになる。関税ゼロの恩恵を受けようとすれば、部品の仕入れ先をこれまで以上にアメリカ産に切り替える必要があるだろう。

 しかし、部品も含めてコストが安いからメキシコに進出したのであり、コストの高いアメリカ産を使うくらいなら、2.5%の関税を払った方がよいという判断もあるだろう。特に、自動車企業だけではなく部品製造企業もメキシコに進出していることから、部品の切り替えは簡単にいかないかもしれない。

「メキシコで生産」が「米国で生産」より有利に

 しかし、米・メキシコ合意報道を受けた時の私の評価は、各紙の分析とは異なるものだった。今回の見直し合意は、トランプの通商政策全体の中で検討する必要があるからだ。

 メキシコが協定見直しに応じたのは、トランプから自動車関税の25%への引き上げという脅しをかけられたからだ。トランプも脅した以上、いずれ全世界からの輸入に対して自動車関税を25%に引き上げるだろう。

 その場合、メキシコは今回の部品調達比率を達成している自動車は無税でアメリカに輸出できるが、それ以外は25%の関税を払わなければならなくなる。これほどの関税の差が生じると、日本企業もアメリカ産の部品の調達を高めるしかなくなる。

 しかし、話はここで終わらない。

 ここで、自動車関税の現行2.5%から25%への引き上げが自動車業界に与えるコストアップを整理しよう。 ・・・ログインして読む
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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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