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車両の原価低減に本気で挑むトヨタ

商品力アップを目指す新しい設計手法「TNGA」に力

片山修 経済ジャーナリスト、経営評論家

 ましてや、自動車産業はいま、トヨタ自動車社長の豊田章男氏がいうように、「100年に一度の大変革期」にある。この大変革期を乗り切るには、熾烈な技術開発競争を勝ち抜かなければならない。しかも、ライバルときたら、自動車メーカーのみならず、グーグル、アップル、ウーバーなど、ITの巨人たちまで含まれる。

「ライバルも、競争ルールも変わってきた。まさに、〝未知の世界〟での生死を賭けた戦いが始まっている」
 と、2018年5月の決算発表記者会見の席上、豊田章男氏は危機感を隠さなかった。

 技術開発競争を制するには、巨額の〝軍資金〟すなわち研究開発費が必要だ。トヨタの研究開発費は、5年連続で年間1兆円を超えている。18年度は、1兆800億円だ。

 これに対して、ライバルの米アマゾンの研究開発費は2兆4000億円を超え、グーグルの親会社アルファベットの研究開発費は1兆8000億円だ。必ずしもすべてが自動車関連ではないにしても、彼らの資金力は、トヨタの比ではない。

 それに、トヨタといえども、経営資源には限りがある。いくらスマート化が「社会の要請」であるとしても、懐具合を無視しては進められない。甘いクルマづくりをしていたら、競争力の低下を招き、たちまち経営危機に陥る。章男氏の危機感の〝原点〟は、これに尽きる。以下は、前出の記者会見での豊田章男氏のコメントである。

「クルマを賢くつくる点では、まだまだ改善の余地があります。もっといいクルマにしたいという思いのあまり、性能や品質の競争力向上を優先し、コストやリードタイムは後回しということになっていないか。あるいは、適正販価‐適正利益=あるべき原価という基本原則を徹底的に突き詰める仕事ができているのか。
 すなわち、開発、生産、調達、営業、管理部門にいたるまで、トヨタのあらゆる職場で、お客さま目線のクルマづくりが実践できていないのではないか、という強い危機感を感じています」

 章男氏の胸の内を忖度すれば、こういうことになる――。トヨタは大企業の病理に侵されている。〝トヨタらしさ〟を忘れてしまってはいないか。この際、いま一度、「原点回帰」をして、すべてのムダを省き、コスト上昇にストップをかけなければ、「生死を賭けた戦い」は勝ち抜けない、と。

クルマづくりの切り札「TNGA」

 そこで、トヨタは、今年度から二つの取り組みを始めた。

 その一つが、もっといいクルマづくりの切り札として始めた、「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の強化と進化である。

 TNGAは、クルマのサイズごとに車台を統一し、部品や設計を共用化して、クルマの基本性能や商品力を大幅に向上させたうえで、生産効率の向上やコスト削減を目指す、新しい設計手法だ。

 TNGAの開発プロセスは、まず、中長期の商品ラインナップを確定し、 ・・・ログインして読む
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筆者

片山修

片山修(かたやま・おさむ) 経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)8万部のベストセラー。『本田宗一郎と昭和の男たち』(文春新書)、『人を動かすリーダーの言葉 113人の経営者はこう考えた』(PHP新書)、『なぜザ・プレミアム・モルツは売れ続けるのか?』(小学館文庫)、『サムスン・クライシス』(張相秀との共著・文藝春秋)、『社員を幸せにする会社』(東洋経済新報社)など、著書は50冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。 公式ホームページ

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