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スルガ銀行は「銀行」だったのか(上)

内部告発や審査部門を無視。過剰な保身体質。これは「銀行」と呼ぶに値しない

深沢道広 経済・金融ジャーナリスト

 関係者によると、審査部の一部は当初から不動産管理会社の家賃保証を活用したシェアハウスビジネスの合理性を疑っていた。

 2015年には物件調査の結果、担保評価額が周辺土地・建物の実勢価格より割高で、家賃保証の原資の賃料について実際の入居状況が芳しくないケース(入居率50%以下が約半数)が担当者レベルでは明らかになり、家賃保証の危険性や虚偽申請のリスクが指摘されたという。家賃保証は空室リスクが大きく、融資審査のために作られた事業計画書と異なり、現実は大きく違っていたのだ。

 2016年には延滞などを管理する融資管理部が横浜東口支店で所属長が変わった後にシェアハウス融資の実行額が急増していた。当然異常値として検知。5月には同ビジネスのリスクが明確に分析され、サブリース会社が自転車操業に陥る不正リスクまで指摘されたが、営業側の意向で取り扱い地域や業者を限定して継続する方針が決まった。

 一部の審査担当者は審査部限りでの記録として審査意見を残していた。第三者委の調査結果によると、審査意見の件数は200件を超える。その内容は「家賃設定に疑義あり」などが目立つが、最終的には営業部門に押し切られ、融資は実行されてしまった。

 融資は2015年の取り扱い開始以降、2017年上半期までの承認率は99%審査で、ほぼなかったに等しい(申し込みがあればほぼ審査は通過)。第三者委は内部監査について事前に作成した監査計画、監査方針、チェックリストに基づいた社内規定の整備状況などの形式的、外形的な確認に終始していた。「実効的な業務監査が行われず、多数の不正行為や機能不全の兆候が見過ごされた」と結論付けた。

「事故者」への融資も承認

 不動産業界では資料の改ざんは古くからおこなわれており、特段驚くべきではない。しかし、スルガ銀行の場合は、

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筆者

深沢道広

深沢道広(ふかさわ・みちひろ) 経済・金融ジャーナリスト

1978年生まれ。慶応大学商学部卒業後、編集者として勤務。05年青学大院経営学研究科会計学専攻博士前期課程修了。格付投資情報センター(R&I)入社。R&I年金情報、日本経済新聞の記者として勤務。12年のAIJ投資顧問による2000億円の巨額年金詐欺事件に係る一連の報道に関与し、日経新聞社長賞を受賞。著書に『点検ガバナンス大改革―年金・機関投資家が問う、ニッポンの企業価値』(R&I編集部編共著、日本経済新聞出版社)などがある。17年7月退社。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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