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スルガ銀行は「銀行」だったのか(下)

人様のお金を預かる意識が希薄。実態は不動産商品を売る証券業務そのものだった

深沢道広 経済・金融ジャーナリスト

 スルガ銀行をめぐる問題はシェアハウス融資だけでは済まなくなっている。

 関係者によると、問題のシェアハウス融資で検査に入った後、同社をめぐるさまざまな問題を把握したという。創業者関連企業への数百億円規模の不適切な融資もその1つで、融資目的が不透明なものや実質的に債務超過の企業も含まれており、一部回収不能となっているもようだ。いわば創業家が銀行を私物化し、金融庁の立場に立てば不適切な会計処理も明らかになりつつある。

 金融庁が前回の検査した際には、創業家関連企業への融資は1000億円を超えていたが、当時の金融庁が取引の適正化を求めたこともあり、残高は大幅に減少していた。しかし、2018年3月末時点でもなお数百億円規模の残高があった点を問題視している。スルガ銀行は問題の関連企業について「子会社ではない」と主張しているものの、金融庁は「実態としては子会社になり得る」と平行線だ。

 さらに、一棟建てアパートなどシェアハウス以外の収益不動産融資の残高は約1兆3000億円ある。これに対する貸倒引当金は現時点でわずか162億円でしかない。シェハウス融資でこれだけずさんな融資をしていた銀行の審査や物件調査を信用しろというのは無理がある。会計専門家は「第三者委の調査結果を踏まえ、影響額は変わり得る。現状は過少引き当ての可能性がある」と指摘する。

個人不正か、組織犯罪か

 金融庁が第三者委の内容をそのまま追認し、無難な行政処分を出することも考えられる。

 ただ、安易に場当たり的な行政処分を下すと、数か月後に類似した事例で判断を再び求められる。アパート経営を主力とする上場企業TATERUが西京銀行の融資で、債務者の預金残高データを改ざんした事案が発覚したためだ。TATERUは事態を重く見て「特別調査委員会を立ち上げ、調査結果を公表する」としている。

 金融庁はなぜスルガ問題のような事案が生じたか根本的な原因を分析し、それを再発防止するために何が最善か考えたうえで、行政処分や刑事告発を慎重に検討する必要がある。第三者委や金融庁自身の検査で、スルガ銀行の組織的な不正行為が明るみに出たことで、不正に関与した個人の問題とするのか、それとも過去の不正行為への制裁はもとより、今後の再生を前提とした再発防止に向けた組織として欠陥への対応を重視するのか。換言すれば、一部の問題行員の個人不正と矮小化するのか、組織犯罪として刑事事件まで発展させ社会的制裁を加えるのかという覚悟が求められる。

 金融庁は近年、森信親前長官の主導で、金融検査マニュアルを廃止し、不良債権処理から対話を重視した金融行政へ転換してきた。そのなかで、麻生太郎金融相や遠藤俊英新長官が今回の事案をどれほど深刻にとらえるかによるだろう。

銀行業の免許取り消しを

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筆者

深沢道広

深沢道広(ふかさわ・みちひろ) 経済・金融ジャーナリスト

1978年生まれ。慶応大学商学部卒業後、編集者として勤務。05年青学大院経営学研究科会計学専攻博士前期課程修了。格付投資情報センター(R&I)入社。R&I年金情報、日本経済新聞の記者として勤務。12年のAIJ投資顧問による2000億円の巨額年金詐欺事件に係る一連の報道に関与し、日経新聞社長賞を受賞。24億円の巨額横領、贈収賄事件など年金ガバナンス、資産運用の諸問題を明らかに。17年7月退社。

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