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経済記者が見る総裁選「アベノミクスを争点に!」

国民が一番期待する政策テーマは「社会保障」である。石破氏はなぜそこを突かないのか

原真人 朝日新聞 編集委員

 安倍首相と石破氏は先週末の日本記者クラブでの公開討論会のあとも、テレビ報道番組などで相次いで論戦を続けた。そこでは安倍首相支持派議員による石破派所属の斎藤健農林水産相への圧力問題をめぐって、一瞬火花を散らす場面はあったものの、全体としてはお互い本気で追い詰めることのない低調な論戦だった。

 もともと安倍首相に財政問題を本気で論じる気などないだろう。財政の現状に強い危機感などないからこそ消費増税の2回の延期をしたのだし、日本銀行に異次元緩和をやらせ、事実上の財政ファイナンス状態に持ち込んだのも首相自身だ。いまも「アベノミクスはうまくいっている」との立場を変えておらず、財政問題や金融政策についての質問が出ようと、たいした答えがでてこないのはわかっていた。

 問題は挑む側の石破氏である。

 首相に反旗を翻せば露骨に干される今の自民党にあって、総裁選に出馬し、婉曲的にではあっても首相のやり方を批判する石破氏はかなり勇気のある政治家だ。ただ、昨年夏、森友・加計問題をへて首相の支持率が急降下していたころの石破氏の発言を思い返せば、最近の発言がかなりオブラートに包まれたものであるといわざるをえない。

「反アベノミクス勉強会」はどこへ

 昨年夏といえば、アンチ安倍の機運が自民党内で頭をもたげていた時期である。

 日銀の異次元緩和による財政ファイナンス依存、借金財政に危機感を抱く自民党の財政健全化派の議員たちは反アベノミクス勉強会を立ち上げていた。野田毅氏、村上誠一郎氏を中心にした派閥横断的な会だ。

拡大反アベノミクス勉強会には野田聖子氏、中谷元氏、野田毅氏、村上誠一郎氏らが出席していた=2017年6月15日、国会内
 初回の5月会合こそ出席者数は少なかったものの、2回目となる昨年6月15日に開かれた会合には、共謀罪法をめぐる国会審議で徹夜あけにもかかわらず、議員40人ほどが集まった。もともとメンバーに名をつらねていた野田聖子氏や中谷元氏に加え、石破氏や額賀福志郎氏ら派閥の領袖も姿を見せた。

 石破氏は会合後に記者団に囲まれ、「これから日本が迎える状況は極めて危機的。言うべきことを言わないのは自分の取るべきやり方ではない」と語っていた。

 その1カ月ほど前には、石破氏は日本記者クラブでも講演している。石破氏ははっきりアベノミクスの危険性に言及。日銀の異次元緩和の出口問題について記者から問われ、次のように話した。

「(現在の政策をずっと続けたら)必ずどこかで破綻がくる。そうでないとおかしい」「出口でハイパーインフレにしてはいけない」「(日銀が目標としている)ゆるやかなインフレって何なのか。実現した例を知らない。コントロールが難しい。インフレとは庶民から資産家への富の移転だ」「戦争を起こし、ハイパーインフレでチャラにすることは絶対にやっちゃいけない」

 さらに、物言えば唇寒しの自民党の雰囲気を念頭にこんなことも言っていた。

「これはおかしくないかと誰も言わない自民党はこわい。大東亜戦争のときもそうだった。今がそれと同じとは言わないが、組織の中で批判がなくなるのは日本を幸せにはしない」

 その石破氏にしては、最近の総裁選論戦での物言いはかなり抑制的で、奥歯に物の挟まった言い方だと言わざるを得ない。アベノミクスを本気で批判しよう、国民になんとしても警鐘を鳴らさなくては、といった本気が感じられないのだ。

日銀が大量の紙幣を刷りまくり、政府の赤字を穴埋めしている

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筆者

原真人

原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員

1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。経済面コラム「波聞風問」を執筆中。著書に『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)、共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。

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