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経済記者が見る総裁選「アベノミクスを争点に!」

国民が一番期待する政策テーマは「社会保障」である。石破氏はなぜそこを突かないのか

原真人 朝日新聞 編集委員

 石破氏が「大東亜戦争」を持ち出したのは、おそらく日本の置かれている財政事情が敗戦時に匹敵するほどのひどさだということを暗示したかったのではないか。

 日本政府が抱える借金は1000兆円をはるかに超え、国内総生産(GDP)に対する比率は230%を超えている。これは敗戦時に匹敵するひどさである。

 先進国でもダントツに高い比率だ。財政破綻して欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)から支援を受けているワースト2位のギリシャでさえ180%だ。

 ところが日本はギリシャのように目に見える債務危機には至っていない。年金も医療保険や介護保険も、いまも決められた通りに国民に払い続けられている。公務員給与が支払われず政府窓口が閉鎖するというような事態にもなっていない。そして毎年度の予算では、新たな巨額財政赤字をたれ流し続けている。

 こんなことが続けていられるのは、日本銀行が大量の紙幣を(電子データ発行も含めて)刷りまくり、そのお金で政府の赤字を穴埋めしているからだ。日銀は巨額の資金を株式市場にも供給しており、買い支えによって株価を高値で安定させてもいる。本来なら日本の財政悪化を警告する市場の警報装置は、いずれも機能していないのだ。

 こんな都合のよい政策がずっと続けられるのなら、納税者にとっても、投資家にとっても、これほど楽なことはないだろう。だがそんな打ち出の小づちは存在するはずがない。実際には、いつ財政破綻の坂道を転がり出してもおかしくないし、日銀資金の高げたを外せば株価が急落するのはまちがいない。国民生活の運命がかかるこれほどの重大問題が、総裁選の論戦からすっぽり抜け落ちている。これは驚くべきことだし、国民をバカにした話ではないか。

石破氏も「ポピュリズムの罠」に陥ったのか

 財政・金融政策の危険性を熟知している石破氏が、それを争点にしないのはなぜか。 ・・・ログインして読む
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筆者

原真人

原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員

1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。コラム「多事奏論」を執筆中。著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)。共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。

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