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日米首脳の通商協議を緊急報告する

民間の活動を政府が約束させられた80~90年代の日米摩擦の二の舞にならないか

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 根本的には、農産物でアメリカが日本市場で豪州などに比べて不利になることが、アメリカをTPPに復帰させる唯一の手段だった。日米FTAであれ日米TAGであれ、農産物でアメリカを豪州等と同じに扱うことにすれば、トランプのアメリカはTPPに復帰しない。

 現在の米中貿易戦争は、知的財産権、国有企業、投資などの分野で中国が不公正な対応をしていることが原因だった。これらの分野でWTOを超える高度な規律を課すこととなったTPPにアメリカが復帰すれば、中国対策としてアメリカにとっても有効な手段を獲得できたはずだった。

 アメリカも入ったTPPがイギリス、韓国やタイなども加えてさらに拡大し、巨大な経済・貿易圏を形成していけば、中国もTPPに入らざるをえなくなるか、それができないときでもTPPの規律をWTOの規律にするよう要求することができたはずだった。関税を上げるだけでは、中国はこれらの分野について譲歩しない。

 中国を意識した今回の日米首脳間の共同声明文の部分は、問題を指摘しているだけで、それを実現する有効な手段にかける実質や内容のないものとなった。遠くから中国に吠えているだけである。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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