メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

「カネの威力で9条改憲」も許すのか?

CM規制なき国民投票は民意を歪める

小此木潔 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

 英国では、国民投票時の有料CMは禁止している。そのかわりに賛成、反対それぞれの代表グループが制作した広告を、公共放送であるBBCなどが無料で公平に流す仕組みになっている。放送の長さや時間帯は選挙委員会が決める。投票運動の費用の上限が決められ、賛成・反対両派の代表的団体に対しては政府から資金提供もなされるという。新聞や雑誌広告の規制はない。

 フランスでも、国民投票における有料CMは禁止となっている。その一方、一定の条件を満たす政党などに公共放送での広告枠が無料で供与される仕組みだ。この場合、放送時間の長さは所属国会議員の数によって決まる。賛成・反対両派の広報活動は第三者機関が監視する。

 このほか、イタリア、スペイン、デンマークもテレビの有料CMは禁止(ただしイタリアは地方局では条件付きで可)。イタリアとスペインでは英仏同様に公的に配分される広報時間があり、そこで意見広告を流すことができる。一方、カナダでは国民投票の場合も日本と同様に有料CMが自由とされているようだ。米国やドイツには国民投票制度はない。

 本来なら、2007年に国民投票法を制定するときに英仏などの事例にならって、有料CMを原則禁止とし、国政選挙の政見放送のように時間帯を決めて無料の意見広告を流す方式を模索すべきであった。だがそうはならなかった。規制すると政治がメディアに介入することになるので、それを避けたいとする考えがメディアや学者の間にも根強くあった。弊害についてまともに議論されずに決まってしまったことについては野党やメディア、アカデミズムにも責任がある。

 この国の主権者が投票権を正常に行使できる条件を整えるためには、国民投票の期間中、賛否両論を公正かつ公平な方法で述べ合う機会を保証しなければならないし、その機会の平等をカネや権力で損なうようなアンフェアなやり方が認められていいはずがない。国民投票法を改正し、テレビやラジオの有料CMを英国やフランスのように原則禁止とするか、一定の枠内に抑えるようにすべきだ。同時に、 ・・・ログインして読む
(残り:約2702文字/本文:約5367文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

上智大学教授。群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。富山、奈良、大阪、ニューヨーク、静岡、東京で記者をしてきた。近年は日本の経済政策や世界金融危機など取材。2009年5月から東京本社論説委員室勤務、11年4月からは編集委員も務め、14年4月から現職。著書に「財政構造改革」「消費税をどうするか」(いずれも岩波新書)、「デフレ論争のABC」(岩波ブックレット)。

小此木潔の記事

もっと見る