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たかが10秒されど10秒 アウディが見せた自信

自動運転レベル3に進むドイツ、日本も後追いで法規制緩和か

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 A8はどのようにレベル3を達成したのだろうか。

 前方を監視するセンサーはレーダーセンサー、超音波センサー、カメラ、ライダー(LiDAR:レーザー光を使ったセンサー)など6種類。仮にセンサーの一つが故障しても他のセンサーで機能を補う。

 センサーから得た数値や画像は、米エヌビディア社やオランダのモービルアイ社の部品を搭載した「zFAS」と呼ぶ集中制御装置で処理。車に発進、加速、ハンドル操作、ブレーキなどの指示をリアルタイムで出す。

 もし自動運転では手に負えないと判断すると、A8は運転者に自ら操作するよう知らせる。運転者はその合図を受けてから自分で運転するまでに10秒の余裕を与えられている。その間も車は自動運転を維持するので、運転者は落ち着いてスマホや本をしまい、運転の準備ができる。

 運転者が自動運転中に好きな時間の過ごし方ができるのは、切り替え時に10秒の余裕があるからだ。この10秒も含め自動運転時の事故の責任は車側が負ってくれる。アウディがレベル3に自信を持っていることが分かる。

ドイツはレベル3普及をにらみ道交法改正に乗り出した

 レベル3の技術が今後普及すると見たドイツ政府と連邦議会は今年、道路交通法改正案を可決した。レベル3の運転では自動と手動が混在するため、航空機のフライトレコーダーのような記録装置を車に備えることを義務付け、車側の責任と運転者の責任を明確に区別して立証できるようにした。

 いまアウディは同法に基づきレベル3で走る承認申請を政府に提出している。ドイツは官民挙げて自動運転を支援し、国民の世論調査でも支持率が高いので、A8はおそらく来年中にはレベル3でドイツの高速道路を走ることになるはずだ。

 親会社のフォルクスワーゲンやダイムラー、BMWもやがて追随し、日米メーカーを突き放しにかかるだろう。

 フォルクスワーゲンやアウディでは、3年前、排ガス規制の不正を組織的に行った事件が発覚した。筆者は経営が大打撃を受けると予想したが、実はたいした影響はなかった。今年上半期のフォルクスワーゲングループの販売台数は過去最高の約552万台で、前年同期を7.1%も上回っている。

 独メーカーの経営に詳しい専門家は「この経験を経てフォルクスワーゲンやアウディは、もしレベル3の自動運転でトラブルが起きても、経営的に十分乗り切れるという自信を深めたようだ」と解説する。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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