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”減反廃止”でも米生産が増えない本当の理由

減反政策の本質は転作補助金。政府は今もそれでカルテルを維持しているのだ。

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 政府が買い入れるという食糧管理制度の下では、農家保護のために米価を引き上げれば、生産量が増えて需要が減る。1960年代から70年代にかけて、米価闘争と呼ばれるほど、激しい運動が毎年6~7月頃繰り広げられた。霞が関や永田町は、農家のムシロ旗で囲まれた。農民票が欲しい自民党の圧力に負けて、米価はどんどん引き上げられた。

 この結果、大量の過剰米在庫を抱えてしまった政府は、多額の財政負担をして、家畜のエサ用などに安く処分した。これに懲りた政府は、農家に補助金を出して米の生産を減少させ、政府の買い入れ量を制限しようとした。

 これが減反政策である。

 しかし、農協は簡単に減反に応じなかった。代償に多額の減反補助金を要求したのである。このため、農協に突き上げられた自民党と減反補助金総額を抑えたい大蔵省(当時)との間で、大変な政治折衝となった。これは、自民党幹事長だった田中角栄が、過剰な水田の一部を宅地などに転用することで減反総面積を圧縮し、減反補助金総額を抑えながら、面積当たりの補助金単価を増やすという、とんでもない案をひねり出すことで、やっと収拾された。

 このように減反政策の基本は補助金の交付である。

 そのとき、なにも作物を生産しないのに補助金を出すというのでは、世間の批判を浴びるので、食料自給率向上という名目を付け、麦や大豆などに転作した場合に補助金を与えることとした。つまり、減反と転作は同じことなのである。減反補助金=転作補助金である。

 減反廃止という誤報を認めたくない人による、減反は廃止したが転作は廃止していないという、珍妙な記事を読んだが、農政に関わった人たちにとっては噴飯ものだったのではないだろうか。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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