シェアリングエコノミーの発達で予想されるギャップの拡大
2018年10月16日
タックス・ギャップは、本来申告すべき少額の所得を、税務当局には把握されていないだろうと考えて申告しないというような場合に大きくなっていく。シェアリングエコノミーの発達で、エアビーアンドビーのホスト(貸手)やウーバーの運転手など、少額の所得を得る機会が飛躍的に拡大すると、タックス・ギャップは拡大していくと予想される。
彼らの所得を、無申告・過少申告のままで放置すると、正直に申告する納税者のモラルが低下したり、地下経済の温床になる。そこで、先進諸国は、税務当局が自国のタックス・ギャップを推計し、その対策に当たっている。
シェアリングエコノミーのもとでは、少額の所得の無申告といったこと以外でも租税回避が生じうる。私がよく話す小話がある。(月刊「資本市場」10月号参照)
スウェーデンの所得税の最高税率が80%時代の話である。弁護士が虫歯の治療ということで歯医者に行った。治療が終わったので、代金を支払うというと、100万円だという。弁護士は、「ちょっと待ってくれ、そんなに高いのか、自分の所得税率(限界税率)は80%なので、100万円を払うためには、500万円追加的に稼がないといけない」と文句を言った。これに対して医者は、「私の税率も80%なので、あなたから100万円いただいても、手元に残るのは20万円です」と答えた。
「20万円のために500万円も稼がなくてはいけないのか」と双方はため息をつき、それならいい方法があるということになった。それは、弁護士の持っている別荘を1カ月無料で使うということであった。双方とも税金の支払いに悩まされることがなくなり、めでたし、めでたし、ということであった。
実際ネットで検索すると、自らのスキルと他人のスキルとをマッチングさせ物々交換するサイトはわが国にもすでに存在している。
このような物々交換は、税法を厳格に適用すると、そのスキルを時価評価して収入とする必要があるのだが、まず申告している人はいないだろう。このようなプラットフォームで物々交換が拡大すれば、タックス・ギャップは拡大する。
では、シェアリングエコノミーの拡大の下で、各国はどのようにタックス・ギャップに対応しているのだろうか。今回訪問した3カ国の対応を紹介したい。
まず第1に、収入情報を入手することである。シェアリングエコノミーでは、結局ウーバーやエアビーアンドビーといったプラットフォーマーが情報を保有している。そこで税務当局は、そこから情報を入手することが最も効率的である。しかしプラットフォーマーは、自国に存在しない(外国企業)ことも多く、容易ではない。
この点について、IT国家を標榜するエストニアは、ウーバー本社(オランダ)と直接交渉して、エストニアでの運行と引きかえに、運転手の同意を得たうえで、その収入情報を入手することに成功した。
フランスは、
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