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世界の飢餓問題解決へデジタルコンテンツを活用

佐藤仁 学術研究員/ジャーナリスト

WFPの食糧配給で、食事を分け合う子どもたち=コンゴ民主共和国カサイ州ディバヤ(WFP提供)
 現在、世界の全人口約76億人のうち、約8億2,100万人が飢餓に苦しんでいる。飢餓のない世界を目指して活動する国連の食料支援機関であるWFP国連世界食糧計画(国連WFP)ではアプリやSNSなどデジタルコンテンツを活用して飢餓問題に取り組んでいる。

スマホアプリで寄付、60円で子供1人に1日分の食事を提供

 国連WFPでは2015年11月にスマートフォンのアプリ「シェア・ザ・ミール(ShareTheMeal)」を全世界で公開した。このアプリでは、スマホからワンタップで、シリア難民の子どもたちに食事を届けることができる。また集まった募金がどのような成果を上げているかをスマホ上で確認することができる。

 このアプリでは、いつでもどんな場所からでも、食事を「シェア」できる。たった50セント(約60円)の募金で、子ども1人に1日分相当の食事と栄養を届けることができる。アプリで集まった募金は、国連WFPの学校給食プログラムを通じて、ヨルダンで避難生活を送るシリア難民の子どもたちへ給食を届ける活動に使われる。「シェア・ザ・ミール」では、ヨルダン北部の難民キャンプにいるシリア人の子どもたち2万人に、1年間学校給食を提供することを目標に掲げていたが、アプリの提供開始から1カ月も経たない2015年12月、ヨルダンに避難するシリア難民の子どもたちへ300万食がシェアされた。

 「世界のどこでも、人と人は、食事をシェアする(分かち合う)というシンプルな行為を通じてつながっている。このアプリではデジタルな方法で食事をシェアできる。『飢餓ゼロ世代』、すなわち飢餓のない世界を実現する次世代の人たちが、飢餓に終止符を打つために具体的にできることなのです。」と国連WFPのアーサリン・カズン事務局長(当時)は述べた。国連WFPでは2030年までに「飢餓ゼロ(ゼロ・ハンガー・チャレンジ)」の実現を目指している。

 「シェア・ザ・ミール」アプリは大きな可能性を秘めている。世界のスマホ利用者数は、飢餓に苦しむ世界の子どもたちの20倍に上り、2015年6月からドイツ・オーストリア・スイスの3カ国で試験的にアプリを公開しトライアルを行った。その結果、期間中に3カ国で12万人がアプリを利用し、アフリカ南部の国レソトの子どもたちへ180万食を届けることができた。

 「シェア・ザ・ミール」の創設者の1人であるセバスチャン・ストリッカー氏は「このアプリの全世界公開により、世界中のスマートフォンユーザーが、おなかを空かせた子どもたちを支援できるようになります」と述べていた。

初のSNSを活用したマッチング寄付

 さらに国連WFPは2017年10月から12月31日まで「世界食料デーキャンペーン2017 つなげよう!一杯の給食、 いっぱいの夢」を展開した。5,000円で子ども一人に学校給食を一年間届けることができるキャンペーンだった。キャンペーンでは、ソーシャルメディア(SNS)を通じて86,723件の協力を得ることができ、この3カ月間のキャンペーンを通じて、途上国の子ども10,225人の給食1年分の寄付を集めることができた。著名人30名も参加して積極的にSNSで呼びかけていた。

 2017年から初めてSNSを活用したマッチング寄付も行っていた。「マッチング寄付」とは、以下のような流れだ。
(1)個人がSNS(Instagram、Twitter、Facebookのいずれでも)に「#WFP給食の思い出」というテキストを入れて投稿。
(2)投稿1件につき、WFPの活動を支援している企業が30円を寄付。
(3)寄付金は国連WFP本部(ローマ)に送金され、国連WFPが途上国で実施する、学校給食支援に役立てられる。

 世界では、学校に通うことすらできない子どもが6,100万人もいる。そこで国連WFPでは、途上国の学校で栄養価の高い給食を提供する「学校給食プログラム」を実施。子どもたちの健全な発育を助けると同時に、学校に通うきっかけとなり、教育の機会を広げている。

映画館で広告動画キャンペーン「Feed Our Future」

 また国連WFPでは、2018年9月に世界中の映画館広告会社で構成される業界団体SAWA(Screen Advertising World Association)とともに、世界の飢餓問題に取り組むための広告キャンペーン「Feed Our Future」を世界各国の映画館で開始した。

 CM映像「Feed Our Future」を日本を含む世界30カ国以上の映画館で本編前に上映している。60秒のCM映像は、華やかな医学賞授賞式での会見シーンが描かれ、

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