過剰な他者承認を求めない「嫌われる勇気」も必要だ
2018年10月18日
現代社会では人間関係が複雑になるとともに、対人関係に悩まされる人が増えている。コミュニケーションが多様化し、新たな意思疎通の方法になじめない人もいる。SNSで常に他者とつながっていないと不安を覚え、ネットワークからこぼれ落ちることを心配する一方、気に入らなければ簡単に他者との関係を遮断してしまうこともある。
近年、社員の対人関係を円滑にするための企業研修やメンタルヘルス講習に「アドラー心理学」が活用されている。特に他者からの評価を強く気にかける人にとって、アドラーの『ありのままの自分を受け入れ、他人の評価を気にしないこと』や『他者の期待に応えるために生きるのではなく、自然体で生きること』という教えは心に響くようだ。
ベストセラーにもなった岸見一郎・古賀史健共著の『嫌われる勇気~自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイアモンド社、2013年)が説くように、他者の目を気にせず「嫌われる勇気」があればより自由に生きることができるだろう。ただ、社会生活を送る上で、人間は他者や社会から評価されることで生きがいを感じ、達成感をいだくのも事実だ。他者の評価が自己の成長を促すこともある。それは過信や狭い視野に基づく独善を反省したり、逆に自信の源泉にもなったりするからだ。
現代社会は成熟し多様化しつつあるが、われわれのライフスタイルはそれにふさわしいものだろうか。多くの人が自分らしく個性的でありたいと願いながらも、本当は自信が持てず他者の目をひどく気にしながら生きていないだろうか。「いいね!」を求める社会の背景には、自己アイデンティティーの不在があるように思えてならない。
SNSの「いいね!」にみられるような承認欲求が強い時代、他者の評価を過度に気にせず自由に生きるためにはどうすればよいのだろうか。自己アイデンティティーの形成は、中高年になれば仕事と深く結びついており、どんな仕事をして生きてきたのかは、その人のアイデンティティーを語る上できわめて重要な要素だろう。
仕事は収入を得る手段に留まらず、個人の自己実現と密接に関わっている。かつて、労働は苦役だったが、義務としてではなく自発的に行う仕事は、それ自体が目的となり、手段ではなくなる。仕事を通じて自らの人生観や価値観を体現するライフスタイルは、収入を得るという価値を超えて、自己アイデンティティーの基盤になるものだ。
一方、今日では仕事は単純に経済的手段と割り切り、余暇時間を個性的に楽しむ人も増えている。その人にとっては、仕事以上に余暇の過ごし方が自らのアイデンティティーになっているのだ。近年では働き方が多様化し、仕事と趣味の境界線はあいまいになり、時間的にも空間的にも区別が難しくなっていることも確かだろう。
近年、「キレる」高齢者という言葉をよく聞くように、高齢者の反社会的行為が増えている。例えば鉄道の駅員等に対する暴力行為だ。日本民営鉄道協会の公表資料によると、大手私鉄16社における2017年度の暴力行為は174件発生。22時以降の深夜の時間帯、週末の金曜日に多く、加害者の6割ほどは飲酒しているという。年代別では60代以上が全体の約2割を占め、高齢者が事件の加害者になるケースも多い。
高齢者による万引き犯罪も増加しており、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください