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米中貿易戦争の行方

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

ホワイトハウスのローズガーデンで演説するトランプ米大統領=2018年10月1日、ワシントン

 2016年、大統領選挙期間中、ドナルド・トランプ現アメリカ大統領は中国との間の膨大な貿易不均衡を問題として取り上げ、2018年に入って、太陽光発電パネル・洗濯機・鉄鋼・アルミニウム等に追加関税を課すことを発表した(太陽光発電パネルには30%、洗濯機には20%以上の追加関税、鉄鋼には25%、アルミニウムには10%)。これに対して中国は、果物などアメリカから輸入する製品128品目に15~25%の報復関税措置を行うことを発表した(アメリカの鉄鋼アルミ製品への追加関税措置の発動は2018年3月23日、中国の報復関税措置の発表は2018年4月1日)。

 これを受けて5月3日北京で、5月17日にはワシントンで米中閣僚会議が開催され、中国はこれを受けて輸入される自動車および自動車部品などの関税引き下げ措置を発表、アメリカもZTEの販売禁止措置の解除を発表した。貿易戦争は一旦終息しそうに見えたのだが、6月16日、アメリカが中国から輸入される自動車や情報技術製品・ロボットなど1102品目に対し、7月6日から段階的に500億ドル規模の追加関税措置を行うと発表し、再燃することになってしまった。これに対し、中国側も課税された際の対応措置として自動車や農作物など659品目(後に2回、合計878品目に変更)について追加関税を行うと発表した。

 そして、7月6日、アメリカは中国から輸出される818品目に対して340億ドルの追加関税措置を発表し、これを受けて中国も同規模の報復関係を発動したのだ。7月10日には、アメリカは中国の報復関税に対する追加措置として、中国からの衣料品や食料品など6031品目に対して2000億ドル規模の追加関税を検討することを発表した。この措置により、課税対象品目は上限に達しているとされている。

 8月23日には米中が第2段の関税措置を発動、9月18日にはアメリカが第3段の関税措置発動の予告をしたのだった。これを受けて、中国は世界貿易機関(WTO)に申し立てを行った。9月24日には米中が第3段の関税措置を発動したが、アメリカは当初予定していた6031品目と5745品目に減らし、2018年は関税を10%と留めるとした。中国側は、当初5%・10%・20%・25%の4種類の予定だったが、10%のものは5%に、20%・25%のものは10%に変更したのだった。また、アメリカはレアアースなど、中国は原油などを草案からはずしている。

中国を「競争国」と位置づけ

 9月24日の追加関税発動で、両国はお互いの国からの輸入品160億ドル相当に25%の追加関税を発動したのだった。米中両国は9月22日に3ヶ月ぶりとなる貿易協議を次官級で再開したが、事務レベルのため大きな進展は期待できず、制裁関税と報復措置の応酬は続いているという状況だ。トランプ大統領は9月20日のロイター通信とのインタビューで「対中協議には期限はない」と強硬姿勢を崩しておらず、米中貿易戦争に歯止めがかかる気配はない。

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