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「フェイク画像」の時代に求められる教育とは

小林啓倫 経営コンサルタント

150年前のフェイクニュース

拡大1865年に制作されたとみられる「リンカーンの」肖像画(アメリカ議会図書館ウェブサイトより。http://www.loc.gov/pictures/item/2003654314/)
 1865年に制作されたとみられる、1枚の肖像画がある。描かれているのは、奴隷解放宣言で知られる第16代米大統領エイブラハム・リンカーン。威風堂々とたたずむ姿は、まさに大統領にふさわしい自信に満ちたものである。

 この肖像画は銀板写真(ダゲレオタイプ)を基に制作されているのだが、ひとつ大きな秘密を抱えている。実はリンカーン本人なのは顔だけで、首から下は別人なのだ。その別人とは、ジョン・カルフーンという同じく米国の政治家である。彼は第6代米大統領ジョン・クィンシー・アダムズの下で副大統領を務め、奴隷制を擁護する立場に立った人物だった。

 リンカーンが1865年に暗殺されたとき、彼を大統領らしい姿で描いた肖像画が存在しなかった。そこで威厳のある姿勢で立つカルフーンの銀板写真に白羽の矢が立てられ、前述の肖像画が作成されたというわけだ。カルフーンも1850年に亡くなっていたのだが、両者の死後、奴隷制をめぐって異なる態度を取った2人の写真が合成されるというのは、なんとも皮肉な話だ。

 いま「フェイクニュース」、すなわち偽(フェイク)の情報を本当のニュースであるかのように流布させる行為(あるいは特定のニュースを「フェイクニュース」だと糾弾する行為)に注目が集まっている。その流れで「フェイク画像」や「フェイク映像」という言葉も登場しているが、「写真を加工する」という行為に関して言えば、このように写真という技術が開発されて間もないころから存在していたわけだ。しかしいまやその加工技術は、リンカーンの肖像画とは比べ物にならないほど進化している。

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筆者

小林啓倫

小林啓倫(こばやし・あきひと) 経営コンサルタント

1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『今こそ読みたいマクルーハン』(マイナビ出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(トーマス・H・ダベンポート著、日経BP)など多数。また国内外にて、最先端技術の動向およびビジネス活用に関するセミナーを手がけている。

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