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トヨタが狙う、プラットフォーム企業への転換

ソフトバンクと提携し、「モビリティー・カンパニー」目指す

片山修 経済ジャーナリスト、経営評論家

新技術「CASE」の登場

「自動車業界はいま、100年に一度の大変革の時代を迎えています。その変化を起こしているのは、『CASE(ケース)』と呼ばれる新技術の登場です」

 これは、豊田氏が近年、口にする常套句である。

 「CASE」とは、コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化の頭文字をとった造語だ。あらゆるものがインターネットにつながる時代を迎え、クルマの概念は大きく変わろうとしているのだ。

 クルマがネットにつながれば、情報が増え、さらに自動運転が実現すれば、クルマは所有よりシェアのニーズが増える。それは、自動車業界にとって競争相手や競争ルールさえも変える大変革にほかならない。いや、自動車業界だけではない。その技術進化は、産業の再編成を促すほどの力を秘めているのだ。

 「『勝つか負けるか』ではなく、『生きるか死ぬか』という瀬戸際の戦いが始まっている」と、豊田氏は危機感をあらわにする。

モビリティーサービスのプラットフォーム「e-Palette」

拡大トヨタ自動車が実用化を目指す自動運転車「e-Palette」=今年1月、米ネバダ州ラスベガス
 モノづくりに強みを持つトヨタが、IT企業のソフトバンクと手を組むことは、これまでの常識ではありえなかった。自動車メーカーが、うかつにIT企業と組めば、庇(ひさし)を貸して母屋を取られる。すなわち、モビリティー革命の主導権を握られてしまうのではないかと、自動車メーカーはIT企業との提携に慎重だった。にもかかわらず、トヨタはソフトバンクとの提携に踏み切った。その思惑は何か。

 自動車業界は過去、新車販売台数をめぐって競争を繰り広げてきた。しかし、競争の軸は変わった。いかに多くのデータを獲得するか。そして、データを活用してどんな付加価値サービスを開発するかに移っているのだ。

 競争の軸が変わるなかで、既存の自動車メーカーが自前で戦うのは、ムリがある。技術の「手の内化」を得意とするトヨタも、「100年に一度の大変革」を前にして、IT企業との提携に踏み切らざるを得なかったというのが正直なところだろう。

 ただし、トヨタは、モビリティー企業を目指すにしても、IT企業には、主導権を渡さないという強烈な意思表示をしている。その具体的な姿が、「e-Palette Concept」であり、それは豊田氏の覚悟のあらわれといっていいだろう。

 「e-Palette」は、移動や物流、物販など、多目的に活用できるモビリティーサービスのプラットフォームだ。低床、箱型のバリアフリーデザインで、全長4メートルから7メートルの3サイズが考えられている。自動運転を前提としたEVなので、運転席を必要としない。フレキシブルかつ広い空間に、ライドシェアリング仕様のほか、ホテル仕様、リテールショップ仕様など、サービスパートナーの用途に応じた設備を搭載が可能だという。ボディーは、液晶画面で覆われ、用途に応じて表示が変えられる。

 2020年代半ばまでに、この「e-Palette」を活用して、 ・・・ログインして読む
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筆者

片山修

片山修(かたやま・おさむ) 経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)8万部のベストセラー。『本田宗一郎と昭和の男たち』(文春新書)、『人を動かすリーダーの言葉 113人の経営者はこう考えた』(PHP新書)、『なぜザ・プレミアム・モルツは売れ続けるのか?』(小学館文庫)、『サムスン・クライシス』(張相秀との共著・文藝春秋)、『社員を幸せにする会社』(東洋経済新報社)など、著書は50冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。 公式ホームページ

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