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遺伝子組み換え食品の規制、日本に近づく米国

TPPが食品の安全性を奪うというのはまやかしだ。

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

アメリカは日本と同じ規制へ変更か

 つまり、当時、遺伝子組み換え食品の表示については、実質的には従来の食品と安全性や機能の面で同じである(”実質的同等性”の主張)以上一切表示義務を認めないアメリカと、遺伝子組み換え農産物から作られる食品には(1%でも遺伝子組み換え農産物を含んでいれば)全て表示義務を要求するEUとが、両極端にあった。

 日本はその中間で、大豆を例にとると、改変されたDNAやタンパク質が検出できる納豆や豆腐には表示義務を課し、加工のレベルが高度なため、それらが検出できない油やしょう油には表示義務を課さないという規制をかけてきたのである(なお、混入率5%以下のものについては表示義務を課してこなかったが、今年検出される以上(つまりごくわずかでも混入していれば)全て表示義務を課すという方向に厳格化した。表示義務を課される食品の範囲を拡大し、ある部分でEUより規制を強化した)。

 しかし、アメリカは2016年、バーモント州など表示を求める草の根的な運動を反映し、遺伝子組み換え食品について表示を求める法律(通称”Bioengineered Food Disclosure Law”)を制定し、同年7月オバマ大統領が署名した。この法律に基づき、アメリカ農務省が現在、どのような食品に表示義務を要求するかについて、14000も寄せられたパブリック・コメントを踏まえながら、検討中であり、農務省はできれば12月1日には決定したいという希望を述べている。

 まず、注目すべき点は、法律が遺伝子組み換え(GMO)という言葉ではなく、バイオ工学で作られた食品(”Bioengineered Food”)という、やや射程範囲が広いと思われる言葉を使っていることである。その定義として「1.試験管内で組み替えられたDNA技術を使って改変された遺伝的な物質を含み、かつ、2.その改変が伝統的な育種によるものではなくまたは自然に存在しないもの」とされている。つまり、従来の遺伝子組み換え農産物・食品だけでなく、ゲノム編集されたものまで形式的には対象となる可能性があるのである。”改変された遺伝的な物質”があるかどうかが、カギとなる。

 そして、表示義務が課されないものとして、現在農務省が提案しているオプションは、次の3つである。 ・・・ログインして読む
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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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