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日本が中国の「一帯一路」へ組み込まれていく

欧米が警戒を強める習近平の経済圏構想に入る安倍日本の行方は大丈夫か

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

日本を引き入れ、一帯一路の信頼感を高めたい中国

 今回、日中が協力する52案件は、第3国市場でのインフラ建設、再生可能エネルギー、製造・物流のスマート化、金融などで、総額は約2兆円だ。

 一帯一路を「第3国市場」と呼び変えるアイデアは、経団連の要望を受けた安倍首相が昨年11月、習主席に提案した。呼び変えは米国が敵視する一帯一路を表に出さないための工夫である。

 一帯一路の対象国の多くは先の表で見るように、中国の融資による過大な対中債務を抱えている。マレーシアやモルディブでは計画の見直しが行われた。今後も多くの国で政治混乱が起きる恐れがある。日本は中国と一緒にそこに入って行く。

 中国は日本を引き込むことで一帯一路の信頼感や透明性を高め、行き詰まりを打開したい。日本は新たな市場やビジネスが欲しい、と両者の思惑が一致した。

 人民日報電子版によると、李克強首相は日本の政財界人を前に「中国は最大の開発途上国だ。国民生活の改善が政府の任務」と述べた。国家の位を下げた謙虚な物言いである。中国は日本に愛想のいい顔を見せている。

 要注意なのは52案件の協力相手のほとんどが国有企業という点だ。

 例えば経団連会長会社の日立は電力分野で中国東方電気集団と、住友商事は製造・物流の自動化やスマート化で中国国際海運集団と、メガバンクは国有銀行と組む。

 中国は国有企業の共産党支配を一段と強化している。昨年は「社内に共産党組織を設置し、経営判断は党組織の見解を優先する」などの文言を定款に明記するよう要求。経営への党の介入を正当化した。

 国有企業は市場の論理よりも、最終的に党が求める国益実現のために動く。近年の統合によって国有企業は巨大化し、国家統制下にあって経営効率が悪い。日本企業が手助けすれば大助かりだ。

52案件は本当に現地のためになるビジネスなのか

 9月末に開かれた日米首脳会談の共同声明では、中国を念頭に「知的財産の収奪、強制的な技術移転、国有企業による(貿易の)歪曲化や過剰生産を含む不公正な貿易慣行に、日米または日米欧3極で対処する」と国有企業を断罪した。

 そのわずか1か月後の日中首脳会談で、日本は手の平を返したように国有企業と密接に協力すると宣言した。「不公正への対処」はどうなったのか。52案件は本当に現地のためになるビジネスなのだろうか。

 米国はこの事態をどう見ているのだろうか。今のところ非公式に「米国の国益に反しない限り静観する」と報道されている。

 しかし、米国の本音は、一帯一路が日本の参入で活発になることに警戒的だ。米国が何かの案件で「国益にかかわる」と判断すれば、日本に「指導」を出すこともありうるだろう。どの国益を優先するのか、日本は米中対立の狭間で難しい立場になる。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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