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米中貿易摩擦の緩和は人民元高なのか

武田淳 伊藤忠総研チーフエコノミスト

中国は急速な人民元安を望まず

 このように、最近の人民元安は、専ら米中の経済ファンダメンタルズの違いを素直に反映したに過ぎず、中国政府は決して元安を望んでいるわけではない。なぜなら、特に元安の速度が急な場合、中国からの資金逃避を誘い、さらに元安を加速させ、人民元相場の下落に歯止めが掛からなくなるためである。

 確かに、人民元安は米国による輸入関税引き上げの一部を吸収する余地を与えてくれるほか、米国以外の地域への輸出においては価格競争力を高めるため、中国経済にとっては、景気が既に減速気味となりつつあり、今後は貿易摩擦による悪影響が強まる可能性が高いことを踏まえると、救いの手となるだろう。

 しかしながら、大幅な人民元安は輸入品の価格上昇を通じて国内物価の上昇圧力をも高め、景気の牽引役として期待される個人消費に冷や水を浴びせるだけでなく、国民の不満を高め共産党一党独裁体制の基盤を揺らがせることにもなりかねない。企業にとっても、人民元の下落はコスト増となるばかりでなく、外貨建て債務の負担を膨らませるものである。そのため、中国政府にとっては、緩やかであればともかく、半年で10%を超える人民元安は、資本規制という強権を発動しないと制御不能となる恐れもあり、それが官制相場と批判されることも避けたいため、全く望んでいないはずである。

拡大会見するムニューシン米財務長官=2018年2月23日、ワシントン

もはや人民元は米国の有効なカードにあらず

 では、米国にとって人民元安は、どういう位置付けになるのだろうか。

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筆者

武田淳

武田淳(たけだ・あつし) 伊藤忠総研チーフエコノミスト

1966年生まれ。大阪大学工学部応用物理学科卒業。第一勧業銀行に入行。第一勧銀総合研究所、日本経済研究センター、みずほ総合研究所の研究員、みずほ銀行総合コンサルティング部参事役などを歴任。2009年に伊藤忠商事に移り、伊藤忠経済研究所、伊藤忠総研でチーフエコノミストをつとめる。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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