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サウジマネーの運用代理人となった孫正義

金主と信じた皇太子が記者殺害への関与を疑われることまでは予期できなかった

大鹿靖明 朝日新聞経済部記者

サウジは最大のスポンサー

 カショギ氏が残虐な方法で殺害されたらしいにもかかわらず、その直後に多忙な孫氏がわざわざサウジを訪問し、ムハンマド皇太子ら高官と会ったのは、孫氏にとってサウジが最大のスポンサーであり、皇太子が資金運用部門のリーダーだからである。

拡大サウジアラビアでの太陽光発電事業について覚書を交わした孫正義氏(左)とサウジのムハンマド皇太子=2018年3月27日、ニューヨーク

 ソフトバンクグループは2017年、サウジの潤沢な資金を元手にした投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)を設立している。総額10兆円という巨大ファンドに、同社自身、最大3.1兆円を出資するが、それを上回る資金を投じるのが、サウジのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)の最大4.7兆円だった。このほか、アップル、シャープ、鴻海、クアルコムなど孫氏と親密な関係を築いてきたIT・ハイテクの大企業も出資しているが、圧倒的に最大の金主はサウジだったのである。

 ソフトバンクがSVF構想を発表し、サウジ側と覚書を締結した2016年、ムハンマド皇太子(当時は副皇太子)は「テクノロジー業界での人脈を持ち、高い投資実績のあるソフトバンクグループと覚書を交わしたことをうれしく思います」とコメントした。

 アップルの故スティーブ・ジョブズ氏を始め、鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)、アリババグループのジャック・マー、さらにトランプ大統領に近いとされるカジノ王のシェルドン・アデルソンの各氏やロシアのプーチン大統領に至るまで、孫氏の人脈は幅広い。20年以上もシリコンバレーを中心とした先端企業に投資してきただけにIT・ハイテク界での顔は広い。5~6年で交代する日本の電機業界の首脳クラスでは、とてもじゃないが歯が立たない。

 サウジはそんな孫氏の人脈と目利き力に期待したのであろう。ヤフーやアリババへの投資の成功やボーダフォンの経営再建など、彼の目利き力、経営力は随一である。一声かければ世界から10兆円が集まるわけである。

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筆者

大鹿靖明

大鹿靖明(おおしか・やすあき) 朝日新聞経済部記者

1965年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。88年、朝日新聞社入社。アエラ編集部などを経て現在、経済部記者。著書に第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』を始め、『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』、『ヒルズ黙示録・最終章』、『堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産』、『ジャーナリズムの現場から』がある。近著に『東芝の悲劇』。キング・クリムゾンに強い影響を受ける。

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