
トランプ米大統領(右)と握手する安倍晋三首相=2018年9月26日、米ニューヨークのホテル
中間選挙が示す分断された米国社会
アメリカの中間選挙は、トランプ大統領をはじめとする共和党の猛烈な巻き返しがあったが、予想通り、上院は共和党、下院は民主党が多数を占めることになった。
選挙の終盤、クリントン元大統領や投資家のソロス氏ら民主党の幹部や支持者の自宅に爆発物が送られ、ピッツバーグのユダヤ教礼拝所で開かれていた集会に反ユダヤ主義の男が発砲して多数の死者が出るという、アメリカ社会の分断を象徴するような事件が発生した。
トランプは、アメリカ社会は団結すべきだという発言をしたが、分裂をあおるようなスピーチをしてきたのは誰だとメディアから批判を浴びた。これに対し、トランプは社会の分断を煽っているのはマスコミのフェイクニュースだと反論するなど、泥沼状態である。ピッツバーグのユダヤ教礼拝所周辺では、大統領訪問に際して、市長が大統領に同行しなかったり、これに反対する抗議デモが開かれたりした。
従来なら、大統領や与党の共和党に大打撃を与えるような事件だったが、40%を下回ることはないというトランプ大統領の強固な支持率に大きな変化はなかった。トランプが分断を煽るような発言をする一方、マスメディアに代わって出現したソーシャルメディアが、これまで表では発言できなかった反ユダヤ主義や白人優越主義の考えを拡散し、心情ではこれを支持する人たちの連帯を深めているのである。
共和、民主の両党は何を訴えたのか?
トランプが中間選挙の終了間際になって強調したのは、移民問題である。
アメリカへの移住を求めてこの時期中南米から大量に列をなして行進するキャラバン隊に対して、この中には犯罪者やイスラム急進派のテロリストが紛れているなどの根拠のない主張を展開するとともに、キャラバンを阻止するため軍隊を国境に派遣した(後に撤回したが、キャラバン隊が投石するなら発砲も辞さないと発言した)。2年前の大統領選挙と同様、これは移民によって社会の安定や治安を奪われていると信じる人たちを熱狂させた。
民主党は、大統領経験者は政治に直接関与しないという慣例を破って、オバマ前大統領が選挙応援の前面に立った。さらに前回の民主党大統領予備選挙でクリントン候補を追い詰めたバーニー・サンダース上院議員がトランプ政権や共和党は一部の富裕層を優遇しているだけだと批判し、具体的にはトランプが葬ろうとしているオバマケア(医療保険制度)の維持・充実を主張して、リーマンショック以降反資本主義的になっている若者や国の財政的支援に頼らざるを得ない人たちにアピールした。