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「共和党善戦」に異議あり!トランプ再選に黄信号

アメリカ中間選挙のデータをみると民主党の勝率はかなり高い

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

選挙は上院でも共和党敗北

 まず、今回の選挙が、経済がかつてないほど好調で失業者もほとんどいないという状況で争われたことを忘れてはならない。与党、共和党に極めて有利な状況下で実施されたのである。

 上院100議席のうち改選されたのは35議席、そのうち共和党は9議席を占めるだけだった。現職を当選させたその前の選挙で、民主党が大勝していたからである。既に上院の半数を占めていた共和党にとって、9議席以上獲得すれば過半数を握れるという楽な選挙だった。

 しかも、民主党が守ろうとしていた26議席(州)のうち10の州では、2016年の大統領選挙でトランプが勝利していた。共和党に有利な選挙だったのである。

 11月9日現在、未だに当否が判明しない3議席を除いて、共和党が9議席、民主党が23議席獲得している。この結果、非改選議席と合わせると、共和党51議席、民主党46議席、未確定3議席となっている。これをとらえて上院では共和党が勝利したと言われている。

 しかし、今回の選挙だけについてみると、共和党は、9勝23敗、勝率28%である。これを勝利と呼ぶのだろうか? プロ野球の監督なら、共和党のリーダーであるトランプは、とっくに解任されていただろう。

 2016年にトランプを大統領選挙で勝利させたラストベルトと言われる中西部では、共和党が勝ったのはインディアナとミズーリだけで、ミシガン、オハイオ、ペンシィルベニア、ミネソタでは民主党が勝利している。トランプが69%の支持率を持つウェスト・バージニア州でも民主党候補が勝利した(ただし、この候補マンチン氏は、カバノー氏に承認票を投じた唯一の民主党議員だった)。

 従来から共和党が圧倒していたテキサス州では、2016年大統領選挙の共和党予備選に出馬し、最後までトランプと共和党の大統領候補の指名争いを激しく闘った大物のテッド・クルーズ議員が、彗星のように現れた民主党のベト・オローク下院議員を僅差の末やっと振り切り、当選を果たすことができた。選挙当時、トランプが犯罪者やテロリストがいると攻撃した数千人の難民キャラバンが、アメリカを目指してメキシコを北上しており、メキシコと国境を接するテキサスの人たちが迫ってくる難民に恐怖を感じたことも、選挙に影響した。テッド・クルーズは幸運だった。

民主党の高い勝率

 逆に、上院選での民主党の勝率は72%である。

 今年、104勝49敗という圧倒的な強さでアメリカン・リーグ東地区の3連覇を達成し、続いてアメリカン・リーグを制覇し、さらにはワールド・シリーズ・チャンピオンとなった、ボストン・レッドソックスの勝率をも、アメリカン・フットボールで“The GOAT”(Greatest of All Time:史上最高の略)と称される名クォーターバック、トム・ブレイディ(ニューイングランド・ペイトリオッツ)のパス成功率をも、上回っている。スポーツの世界なら、圧巻の勝率である。

 全議席が改選される下院選では、11月9日現在、民主党が225議席、共和党が201議席獲得している。民主党は改選前の193議席から32議席増である。当選した人の顔ぶれを見ると、女性が100名を超えるほど大きく進出したばかりか、その中でも、イスラム教徒、ソマリア難民出身、先住民出身など多様性に富んでいる。

 これは、トランプ大統領に反発した女性や、銃規制が弱いことによる銃乱射事件の多発などに反発する若年層が、選挙に出向いたことが大きい。選挙結果は逆となったが、歌手のテイラー・スウィフトが、テネシー州の上院議員選挙で女性の権利向上を妨害する共和党候補に投票しないよう呼びかけたため、若者を中心に同州の有権者登録が記録的な伸びをみせた。同州だけでなく全米でも、選挙に関心を持たなかった若年層の投票率が向上した。

 こうして、これまでは関心が低いとされてきた中間選挙に大統領選挙並みの関心が集まり、投票所の前には長い列ができた。これまで35%程度だった投票率が50%程度まで大幅に向上したことは、民主党にとって追い風となった。

 これはデータでも示されている。3分の1だけの改選だった上院と異なり、全米で選挙が行われた下院の投票動向を見ると、女性は、59%が民主党、40%が共和党(男性は、47%が民主党、51%が共和党)、学歴では、大学卒の学位を持っている白人は、53%が民主党、45%が共和党(学位なしの白人の場合、37%が民主党、61%が共和党)、18~44歳の若年層では、61%が民主党、36%が共和党(45歳以上では、49%が民主党、50%が共和党)となっている。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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