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日本の公教育の崩壊が、大阪から始まる

子どもの学力テストの成績で教師が査定され、使い捨てされる時代がやってくる

鈴木大裕 教育研究者 土佐町議会議員

1%の「勝ち組」目指して99%が生存競争する社会

 「アメとムチ」の政策であるメリットペイ制度に対して各方面から批判が噴出すると、大阪市の吉村市長は「子供達の学力向上の努力をし、結果を出す教員が高く評価されるのは当然だ」(吉村氏のツイート)とアメの側面を強調してきた。

 しかし、そもそも事の発端が、全国学力調査で大阪市が政令都市中2年連続最下位だったことに対する市長の怒りだったことを考えれば、それはあくまでも建前に過ぎないだろう。

 いったんムチの側面に光を当てれば、このメリットペイ制度が、教員の身分保障の脆弱化を加速させるツールとなる危険性を孕むことがわかる。

 終身雇用資格の剥奪や正規公務員から非正規契約雇用への切り替えなど、教員の身分保障の脆弱化はもはや世界的な傾向となっている(参照:勝野正章『教職の「非専門職化」と「脱」非専門職化』:「人間と教育」〈97号、2018〉)

 一つ理解しておきたいのは、市場化を目指す新自由主義政府にとって、教員など公務員の安定した雇用形態およびそれを守る組合は邪魔な存在だということだ。新自由主義は、不安定性を肥やしにする。新自由主義的に言えば、1%の「勝ち組」を目指して99%の人間が生存競争をするのが理想的な社会のあり方なのだ。

 その意味では、「頑張っている」教員や校長へのボーナス支給を「エサ」にして導入されたメリットペイ制度が、政府に教育現場に対する管理の強化をもたらし、「結果」を出していない教員や校長を「正当に」解雇し、最終的に教員組合の解体へと突き進んでいくことは大いに考えられる。

 そうなれば教員の序列化は正当化され、公教育の枠組みの中で「当たり」と「ハズレ」が生まれ、「公」の概念そのものが崩壊を起こす。そして皮肉なことに、「結果がすべて」のテスト教育体制の中で、教員が目先の結果、つまり生徒のテストの点数を上げようと頑張れば頑張るほど、教員は自らの専門性を失い、「使い捨て労働者」になっていくのだ。

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筆者

鈴木大裕

鈴木大裕(すずき・だいゆう) 教育研究者 土佐町議会議員

16歳で米国に留学。1997年コールゲート大学教育学部卒、1999年スタンフォード大学大学院修了(教育学修士)。日本に帰国し2002年から千葉市の公立中に英語教諭として6年半勤務。2008年に再渡米し、フルブライト奨学生としてコロンビア大学教育大学院博士課程へ。現在は高知県土佐町で教育を通した町おこしに取り組むかたわら、執筆や講演活動を行う。著書に『崩壊するアメリカの公教育:日本への警告』(岩波書店)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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