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AI・非常勤講師任せの「負け組」教育

公教育の市場化で教育格差が拡大した米国の後を追うのか

鈴木大裕 教育研究者 土佐町議会議員

「効果がない」のではなく「危険」なのだ

 子どもの学力を育てたい、頑張っている教員をちゃんと評価して欲しいという気持ちは、教育関係者であればなおさら強いのに、それをあたかも「教育ムラ」が評価から逃げているかのように描くのは、いかにも政治家らしいズルいやり方だ。

 実際には、個性豊かな子どもたちと日々かかわり、数値だけでは測れない子どもの多様な知性を知っている教育関係者だからこそ、たった数教科のペーパーテストの点数に基づく安易な学力観に対する懸念が強いだけだ。

 そんな基準で教員を評価して良いわけがないとの反論が出るのは当然ではないだろうか。

 ハーバード大学の発達心理学者、ハワード・ガードナーが多重知性理論によって「知性」の多様性を指摘したのは四半世紀も前のことだ。それによれば、人間の知性は、言語的知性、論理・数学的知性、空間的知性、音楽的知性、身体運動的知性、対人的知性、内省的知性、博物学的知性と、少なくとも8つに分類できる。

 そのように多様性に富んだ子どもたちの知性を、たった数教科のペーパーテストで測ろうとするのはあまりにもお粗末だ。

 この制度に反対する教員や教員組合が本当に守ろうとしているのは、自分たちの首なんかじゃない。極端に狭く偏った土俵での勝負を強いられる子どもたちだ。

 だからこそ、メリットペイ制度には「効果がない」という批判そのものが危険なのだ。

 それは、提示された貧弱な学力観に基づいた議論の枠組みを受け入れることであり、「効果がない」と言った途端に「じゃあどうやって子どもたちの成績を上げるんだ? 教員にはどうやって責任を負わせるのか?」と対案を求められ、仕組まれた議論の呪縛に自らハマっていくことになる。

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筆者

鈴木大裕

鈴木大裕(すずき・だいゆう) 教育研究者 土佐町議会議員

16歳で米国に留学。1997年コールゲート大学教育学部卒、1999年スタンフォード大学大学院修了(教育学修士)。日本に帰国し2002年から千葉市の公立中に英語教諭として6年半勤務。2008年に再渡米し、フルブライト奨学生としてコロンビア大学教育大学院博士課程へ。現在は高知県土佐町で教育を通した町おこしに取り組むかたわら、執筆や講演活動を行う。著書に『崩壊するアメリカの公教育:日本への警告』(岩波書店)

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