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世界中で進む「空飛ぶ自動車」導入への取り組み

課題は山積みだが、実現に向けた道筋が見えてきた

佐藤仁 学術研究員/ジャーナリスト

 自動運転の自動車、バスの商用化に向けた開発と実証実験が日本でも自治体を中心に開始されている。自動運転の自動車は日本だけではなく多くの国で商用化に向けた取り組みが進んでおり、だいぶ現実に近づいてきている。近い将来、自動運転の自動車での移動が実現することだろう。

自動運転車の次は「空飛ぶ自動車」

 そして自動運転は自動車やバスだけにとどまっていない。現在、世界中で開発が進められているのが、「空飛ぶ自動車」だ。空を飛ぶのだから、飛行機だと思う人も多いと思うが、英語で「Flying taxi」と呼ばれることが多いため、日本では「空飛ぶタクシー」や「エアタクシー」と呼ばれることが多い。「空飛ぶ自動車」とあまり呼ばれないのは、現在の地上を走る自動車のように個人が手軽に所有できるものではなく、当初は「タクシー目的で利用することが想定されている」ため、「空飛ぶタクシー」と呼ばれているのだと、ドイツの業界関係者から聞いたことがある。ただし、日本のメディアなどでは「空飛ぶ自動車」と記しているところも多いので、ここでも「空飛ぶ自動車」で統一したい。現時点では、当然まだ商用化されていないが、世界中の自動車メーカーや、スタートアップ(「空飛ぶ自動車」を開発することを目的として設立された新しい企業)が「空飛ぶ自動車」の開発に着手している。

 「空飛ぶ自動車」は、1人から数人程度が乗れる自動車タイプで、目的地まで運転手(パイロット)不在で空を飛んで移動することができる。「空飛ぶ自動車」の特徴は、(1)電気で動くこと(石油を消費しない)、(2)自動運転(パイロットが不在)、(3)eVTOL(電動垂直離着陸)で滑走路が不要の3点だ。地上を走っている自動車から翼が出てきて、空を飛びだす仕様ではなく、最初から上空での移動のみを目的としており、例えばビルの屋上から離陸して、目的地のビルの屋上などに着陸することができる。そのため、地上の道路を走る自動車のように渋滞に巻き込まれることもない。また、地上のように歩行者や、自転車、多くの自動車が突然、脇道から出てきてしまうということもないので、「空飛ぶ自動車」はその日の天候や風などに左右されるが、地上の自動車よりもスムーズで迅速な移動が期待されている。かつてはSF映画でしか見たことがなかったような世界が実現しようとしている。

日本でも検討が開始された「空飛ぶ自動車」

 「空飛ぶタクシー」や「空飛ぶ自動車」の開発は日本でも進められている。政府は2018年8月に「空飛ぶ自動車」の2020年代の実用化を目指すための官民協議会の初会合を開いた。現時点では「2020年代」と述べられており、前半や後半などの具体的な時期までは未定となっている。「空飛ぶ自動車」は圧倒的に海外メーカーの方が開発は進んでいるが、官民協議会では、具体的な利用方法や普及に向けての課題を洗い出し、実現に向けた工程表を策定していく。ただし、実用化に向けたハードルは決して低くはない。開発には1機100億円から300億円がかかるとも言われており、特に飛行試験にかかる稼働と開発費用が相当にかかる。

 「空飛ぶ自動車」の実用化に向けて課題が山積みなのは日本だけでなく、世界中どこでも同じだ。開発に向けてのコストが莫大にかかることから、一般の利用者も現在のタクシーのように手軽に使える料金にはならないだろう。また、離着陸時の騒音などの対策も必要だ。さらに事故が起きたり墜落したりした場合の対応、当局による安全基準の設定、保険や法的な規制の問題なども考慮しなくてはならず、課題があまりにも多い。だが、それでも着実に「空飛ぶ自動車」の開発は進んでいる。

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筆者

佐藤仁

佐藤仁(さとう・ひとし) 学術研究員/ジャーナリスト

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割などに関して研究しています。例えば、情報通信技術や国際秩序や安全保障体制をどう変化させたのか、そして新たなデジタルメディアやポップカルチャーなどコンテンツによって人間の行動パターンと文化現象はどのように進化してきたのかを解明していきたいと思っています。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。

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