原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員
1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。コラム「多事奏論」を執筆中。著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)。共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。
「投資大国」から「消費大国」へ。中国は超大国の条件を整えた
前編「消費大国・中国 アリババ巨大セールに群がる人々」では、消費大国となった中国の先端的な消費の現場をご紹介した。後編ではこの巨大消費社会の勃興をどう見たらいいのかについて考えてみたい。
中国の1人当たり名目国内総生産(GDP、2017年)は8643ドルで、日本(3万8448ドル)の4分の1以下にすぎない。つまり平均的な所得水準はまだまだ日本などの先進国に比べると低い。
だが、ショッピングモールのレベルは高く、日本と比べて遜色ないどころか、はるかに進化していた。そこに中国の大衆が気軽に買い物に来るのはなぜなのか。
もちろん今の中国には平均所得を大きく上回る所得を得ている都市住民も少なくないはずだ。国営企業や世界的な大企業に勤める労働者たちの所得は、おそらく日本の企業並みの人が少なくないだろう。そもそも14億人の1割が中高所得層だとしても1.4億人なのだから、ショッピングモールの繁盛ぶりも不思議ではない。そうした消費者たちは少々高くても品質を求めるようになっている。
さらに所得はまだそこまで上がっていない平均的な所得の人々でも、ときには安全な品質、より上質なものを求めてショッピングモールにやってくるのだという。
上海のRTマートの食品売り場には、レジ台がずらりと横に50台も並んでいた。日本ではまずお目にかかれない巨大な売り場だ。
「50台という規模はショッピングモールでは大きいほうです。ただ、30台くらいのモールなら地方都市でも、ざらにあります」と中国人の広報スタッフが教えてくれた。
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