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米国との貿易戦争でも、中国は止まらない

「投資大国」から「消費大国」へ。中国は超大国の条件を整えた

原真人 朝日新聞 編集委員

現金を持ち歩く人はほとんどいない

拡大上海市のRTマートの食品売り場には、高級魚やカニ、エビなどを売るいけすがある。客はここで好きな魚介を袋に入れて買う。隣接するレストランですぐに食べることもできる
 まだ午前中だというのに、それぞれのレジの列には7~8人ずつ客が並んでいた。ほとんどの人がスマホを使ってアリペイ(アリババが手がける電子決済)で払っている。現金を使う人はほとんど見ない。有人レジのほかに、機械で会計が済ませられる無人レジもあった。

 この売り場だけでなく、どの都市、どの店、どのタクシーでも、アリペイや微信(ウィーチャット)による決済が一般的だった。中国ではすっかりスマホ決済が定着していて、現金を持ち歩く人が少ない。スマホ決済が使えない外国人の私はどこに行っても現金で払うのだが、なんだか手間がかかって店の人や運転手さんたちに申し訳ない気がしてしまった。現金支払いが一般的な日本とはまったく異なる消費社会が生まれつつある。

 ただ、一方ですべてが電子決済となると、誰が何を買って、何を食べ、どこへ行った、というような個人情報がすべて電子情報としてネット上に残る。こうした情報が政府や企業に把握され、電子データとして記録されてしまう可能性がある。

 監視社会であるといわれる中国では政府がこれを最大限利用しているのはまちがいない。

 日本ではこの点で消費者の抵抗感が強い。スマホ決済が普及していくには、その点が大きな課題として残るだろう。いまは一般的な現金払いは個人の消費行動を特定もされず、記録もされない、究極のプライバシー重視型決済だからだ。

 しかし、中国人たちに聞くと、「情報を記録されて何が困るの?」という感覚のようだった。便利さに勝るものなし、ということらしい。もともと監視社会の中国では、なにをいまさら、という気分もあるのかもしれない。

 スマホ決済が社会基盤として成立した消費社会では、それを前提としてビジネスを生みだすことが可能となる。この点で中国の起業は、日本よりかなりやりやすくなっているとも言える。スマホで一瞬のうちに決済ができるシステムを利用すれば、ビジネスの組み立てがシンプルで安上がりに、少ない労力ですむからだ。

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筆者

原真人

原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員

1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。コラム「多事奏論」を執筆中。著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)。共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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