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シャープ亀山工場 日系外国人3千人を“首切り”

アップル、鴻海、シャープのものづくりを支えてきたのは日系外国人たちだった

多田敏男 週刊朝日副編集長

人材会社幹部に「脅された」支援労組

 労組側は、許可がないのに労働者を工場に送り込んだ職業安定法違反(労働者供給事業の禁止)にあたるなどとして、この人材会社グループを11月22日に三重労働局に告発している。

 労組側によると、人材会社グループの幹部らから日系外国人の支援活動をやめるよう、電話などで脅しを受けたという。会見で公表された電話の録音には、人材会社グループの幹部だとされる人物が労組側の人を名指しして強い口調で話す音声が入っていた。

「おまえは入院したらしまいじゃ。ようおぼえておけ。見舞いに行って、おまえの酸素呼吸器に手を当ててやる」

 シャープの広報担当者は取材に対し、「トラブルになっているのは認識しているが、十分把握できていない。日系外国人とは直接の雇用契約がなくコメントできない」とする。

 労組側の中野麻美弁護士(NPO法人派遣労働ネットワーク理事長)は、シャープの対応をこう批判する。

「自分の工場で起きていることについて、知らないというのはがくぜんとさせられる。シャープは何が起きているか、知る努力もしてこなかった」

残業代未払いや違法な天引きが横行

 世界的な大企業の工場を巡り、こんなトラブルが起きていることは驚きだが、実は亀山工場だけの問題ではない。

 労組側によると、外国人労働者が急に雇い止めされたり、社会保険や労災保険を受けられなかったりする事例は、全国的に相次いでいる。外国人は雇用者の権利や会社の義務について知識が少なく、都合良く利用されるケースが目立つという。

 例えば、日本語で書かれた退職届に「法律で認められたやり方なので大丈夫」などと言ってサインさせ、会社都合で辞めさせるのに自主退職扱いにしている事例があるという。残業代の未払いや、給料からの違法な天引きも横行している。

 社会保険についても、「加入すると手取り額が減るよ」などと外国人を誘導し、支払い義務を免れようとすることがある。組合側が後から追及すると、「本人が入りたくないというので加入させなかった」などと反論してくるという。

 日本人なら労働基準監督署やハローワーク、年金事務所などに相談できるが、外国人は言葉の壁があり難しい。行政側も通訳が常駐しているところはほとんどなく、支援体制は遅れている。

 こうした弱い立場の労働者が使い捨てにされる問題は、世界規模でも起きている。

 今回の雇い止めの発端になったとみられるのが、工場でつくっていたiPhone用部品などを、海外に生産移管したこと。アップルは効率よくもうけるため自らは工場を持たず、鴻海精密工業などに生産を委託している。鴻海は台湾や中国などに多数の工場があり、どこで生産するのが効率的か常に見直している。鴻海は子会社のシャープの技術力を評価し、亀山工場で部品などを生産していたが、より生産コストの安い海外に移した模様だ。

 世界的な大企業の意向で働く場が失われ、そのしわ寄せが労働者にくる。アップルや鴻海は特別なことをしているわけではない。日本の大手製造業も、少しでも賃金の安い国を目指して、生産拠点を移していくのは当たり前のことだ。

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筆者

多田敏男

多田敏男(ただ・としお) 週刊朝日副編集長

朝日新聞入社後、福岡社会部、経済部、労働問題取材グループ、特別報道部などを経て現在、週刊朝日副編集長。

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