メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

スマホを狙う究極のスパイウェア

サウジアラビア人記者殺害事件で暗躍?

小林啓倫 経営コンサルタント

究極のスパイウェア「ペガサス」

 セキュリティ会社が「究極」と評するだけあり、既にペガサスは多くの国々で存在が確認されている。

 実際にトロント大学の人権監視組織「シチズン・ラボ」の発表によれば、彼らが2016年から18年にかけて行った調査により、世界45ヵ国でペガサスが発見されたそうである。これに対してNSOグループは、「(指摘された45ヵ国のうち)ほとんどの国々でペガサスの運用は行っていない」とコメントしているが、それが具体的にどこの国なのか、またどのような運用が行われているのかは明らかにしていない。

 実は今回のサウジアラビア政府によるペガサス使用疑惑が持ち上がったのも、シチズン・ラボの調査によるものだ。彼らはカナダに住む活動家オマル・アブドルアジズ氏という人物のスマートフォンが、スパイウェアに感染していることを突き止めた。彼はカショギ記者と親しかったため、サウジアラビア政府はアブドルアジズ氏のスマートフォンを監視することで、間接的にカショギ記者の情報を手に入れていたのである。

 特に監視されていたのが、世界中で10億人以上が利用しているメッセージングアプリ「ワッツアップ」上でのアブドルアジズ氏とカショギ記者とのやり取りだった。カショギ記者はこのプライベートなメッセージにおいて、サウジアラビアの最高権力者ムハンマド皇太子を激しく非難しており、これが殺害指示の引き金を引いた可能性があるとされている。

拡大カショギ氏殺害事件をめぐり、米紙ワシントン・ポストは2018年11月2日付朝刊で1ページを使って、サウジアラビアのムハンマド皇太子の写真を掲載し、その下に「真実を要求する」と記した意見広告を掲載した

 アブドルアジズ氏はメディアの取材に対し、スパイウェアに感染してしまったことを悔しく感じていると語っているが、彼も活動家である以上、当局からの監視を警戒していなかったわけではないだろう。それでも罠にかかってしまったのは、ペガサスが非常に強い感染力を持つことに一因がある。

 ペガサスの感染ルートは、主に2つあることがわかっている。 ・・・ログインして読む
(残り:約2694文字/本文:約4829文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

小林啓倫

小林啓倫(こばやし・あきひと) 経営コンサルタント

1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『今こそ読みたいマクルーハン』(マイナビ出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(トーマス・H・ダベンポート著、日経BP)など多数。また国内外にて、最先端技術の動向およびビジネス活用に関するセミナーを手がけている。

小林啓倫の記事

もっと見る