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ブレクジット解決の唯一の道は?

EUに駄々をこねる英国議会。メイ首相に残された道はこれしかない

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

拡大ライトアップされ、夕闇の街に浮かび上がったビッグベン=イギリス・ロンドン
 イギリスのメイ首相はEUと合意したブレクジット協定案の英国議会採決を12月11日に予定し、これは変更しないと主張していた。しかし、与党からも多くの造反者が出て反対が多数に上ることが判明したため、やむなくこれを延期した。次の採決の時期は示されていない。

 メイ首相はEU首脳やドイツのメルケル首相などと協議するとしているが、EU側は合意した協定案は最終でベストのものであり、再交渉には応じられないと言明している。

争点だけははっきりしてきた

 英国議会自体、メイ首相がまとめた協定案に反対する議員が多数を占めているというだけで、反対では一致しているものの、その中身は、ブレクジッターと呼ばれる完全離脱派、残留派、中間派など、さまざまな意見があり混乱している。

 ただ、ここに来てブレクジット協定案に対する争点ははっきりしてきた。

 EU離脱後の移行期間が経過した後のイギリスとEUの関係について、今後交渉しても合意できなかった場合に発動されるバックストップ(「ブレクジットを理解したいあなたへ」参照)の扱いである。

 バックストップとは、端的に言うと、①イギリス領の北アイルランドはアイルランドとの間で厳しい国境管理を行わなくて済むよう、これまで通りEUの関税同盟と単一市場(EUと同一の基準や規則が適用)に留まるが、②イギリス本土(グレイトブリテン島)はEUの関税同盟には留まるものの、(EUの規則等と調和のとれたものでなければならないが)単一市場のようにEUと同一の規則等の採用・適用は求められないというものである。

 バックストップに反対の意見の一つは、北アイルランドとイギリス本土とは同一の市場ではなくなるため、モノが移動する先の市場の基準等に合致しているかどうか国境管理的な処理が必要となるという問題があるとともに、そもそもの問題として、同じ国なのに経済の面では異なる規則等が適用され、イギリスの主権や経済的な統一性や連続性を損なうというものである。つまり北アイルランドとイギリス本土との間に経済的な国境を引くようなもので、経済面では国が分断されることになる。

 また、ブレクジッター、離脱派からは、主権を回復するために、EUから離脱しようとしたのに、将来とも経済面ではEUの規則等に拘束されてしまうと反対されている。特に、EUの関税同盟に留まるために、関税の決定権はEUにあってイギリスにはないことから、他国と自由貿易協定等の交渉はできなくなり(「ブレクジットを理解したいあなたへ」参照)“イギリスの独立した貿易政策”(independent UK trade policy)を損なうと批難している。

 さらに、バックストップの廃止にはEUの同意が必要となるため、バックストップは一時的な措置ではなく、恒久的なものになってしまいかねないという反対意見もある。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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