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トルコ原発輸出断念 今井尚哉の敗北

東芝は失敗、三菱は撤退。残るは日立のみ。もはや新規原発の建設は難しい

大鹿靖明 朝日新聞経済部記者

「いわば役所へのお付き合い」

 東芝・東電連合が退くなか、「いわば役所へのお付き合い」(三菱の元原子力本部幹部)で始まったのが三菱のシノップ原発の計画だった。三菱の社内ではシノップは「今井案件」と言われる。

 こうした経緯を踏まえて、三菱の幹部は今になって「原子力部門が直接、官邸やエネ庁と交渉を持つのは危うい。政府に乗せられる危険性が高い」と反省する。

 だが、あの当時、三菱は神戸造船所で製造していた商船(コンテナ船、自動車運搬船)から撤退し、同造船所は原発と潜水艦の製造に賭ける選択をしていた。原発事故後、国内で新規原発立地が絶望的になっていた。

 今は反省を口にするその同じ幹部が当時、「神戸の5000人の従業員を食わせていくには海外に原発を輸出するしかない」と語っていた。こんな三菱のお家の事情もあったのである。

 三菱によれば、韓国や中国勢に競り負けないよう東芝・東電連合が比較的安価な原発1基5千億~6千億円で建設できるとトルコ側に売り込んでおり、トルコはその東芝の試算をもとに計画を立案していった。トルコにはカネがないため、ここで浮上したのが、原発メーカーが原発を建設し、その後も所有し続け、発電された電気を売って建設費用をまかなうという「BOO」(ビルド・オウン・オペレート)方式だった。

 安倍首相がトルコを訪問した2013年、両国は原発協力の協定を締結。その付属書の中で、三菱重工と伊藤忠商事は仏アレバの開発した最新鋭のアトメア1型原発4基を建設し、売電価格は20年間、1キロワットアワーあたり10.80~10.83米セントにすると決められてしまった。

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筆者

大鹿靖明

大鹿靖明(おおしか・やすあき) 朝日新聞経済部記者

1965年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。88年、朝日新聞社入社。アエラ編集部などを経て現在、経済部記者。著書に第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』を始め、『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』、『ヒルズ黙示録・最終章』、『堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産』、『ジャーナリズムの現場から』がある。近著に『東芝の悲劇』。キング・クリムゾンに強い影響を受ける。

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