山口智久(やまぐち・ともひさ) 朝日新聞オピニオン編集長代理
1970年生まれ。1994年、朝日新聞社入社。科学部、経済部、文化くらし報道部で、主に環境、技術開発、社会保障を取材。2011年以降は文化くらし報道部、経済部、特別報道部、科学医療部でデスクを務めた。2016年5月から2018年10月まで人事部採用担当部長。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ポーランドで開催中のCOP24で米ロとサウジを包囲する国際政治が展開されている
「米国とロシアが協調してサウジアラビアを支持」
こんな見出しが、12月9日の英ガーディアンのニュースサイトに載った。サウジアラビア人記者殺害事件をめぐってサウジ王室の関与が疑われるなかで、米国のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領がサウジに接近したという話? いえいえ、国連の気候変動交渉での一幕を伝える記事だ。
「国際政治の最前線“COP”を知りたいあなたへ」の記事でお伝えしたように、気候変動交渉は単純な「先進国」対「途上国」の場ではない。各国の思惑が交錯する激しい国際政治の舞台なのだ。
何が起きたのか。
「パリ協定」を採択した2015年のCOP21で、気温上昇を「2度未満、できれば1.5度」に抑えよう、ということで各国は合意した。
では「1.5度」に抑えようとした場合、どれくらいの時間が残っていて、どれくらいの対策が必要なのか。それを、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)という、気候変動に関する科学的知見を集める組織に「特別報告書」を作ってもらうことにした。
それが今年の10月、まとまった。現状のままでは、早ければ2040年ごろには1.5度を超えてしまい、海水面の上昇や異常気象の被害が頻発するなどという分析だった。
COP21でIPCCに「特別報告書を作ってね」とお願いをしたわけだから、COP24は、その報告書をIPCCから受け取る場になるわけだ。「はい、確かに受け取りました」という文書を採択する必要がある。
その文書の書きぶりをめぐって、対立が勃発した。
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