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移民労働力は日本にとってプラスかマイナスか?

恩恵を受けるのは資本家であって、労働者は被害を受ける

吉松崇 経済金融アナリスト

移民の経済学

 日本の社会は厳しい少子高齢化に見舞われている。この事実から、外国人労働力を大量に導入することが不可避であると考える人も多い。

 外国人労働力を「輸入」することは、経済学的にはどのように考えられるのだろうか? 移民大国のアメリカの経済学者は、長い間、この問題に意識的に取り組んでおり、研究の蓄積も多い。

 移民研究の第一人者と言われるハーバード大学の労働経済学者、ジョージ・ボージャス教授が面白い思考実験をしている。

 そもそも、移民が文化の壁・言語の壁を乗り越えても移住を決断するのは、自国に居るよりもはるかに高い収入、より高い生活水準を享受できるからだ。何といっても、収入の格差が大きいだろう。先進国と発展途上国の賃金の格差は、ほとんど労働生産性の格差で説明できる。

 今、仮に地球上に国境がなく、文化や言語の壁もないとしよう。究極のグローバリゼーションである。そうすると、発展途上国から先進国に向けて大量の移民が発生する。この移民の流れは、賃金格差・労働生産性の格差が消滅するまで続く。

 その結果、
① 発展途上国の59億人の人口のうち、56億人が先進国に移住する(労働人口では、27億人のうちの26億人)。この移動の前の先進国の人口は11億人で、労働人口は6億人である。
② 世界のGDPは70兆ドルから110兆ドルに増大する。
③ 先進国の賃金は40%下落する。
④ 発展途上国の賃金は2.5倍に上昇する。
⑤ 資本の収益率が60%増大する。
以上は2013年の世界経済データからの推計である。
(ジョージ・ボージャス『移民の政治経済学』白水社、2017年、33~34頁)

 もちろん、こんなことが実際に起きる訳ではないが、ここには移民労働力についての重要な含意が示されている。

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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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