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 世界は今、統合の時代から分裂の時代、あるいは、新たなナショナリズムの時代に入ってきたように思える。アメリカのドナルド・トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」をその政策の中心に据えている。自国のことをまず考えるというのはある意味では当然のことだが、世界の盟主としてアメリカのみならず、世界をその視野に入れ続けてきたアメリカの政策転換だということもできるのだろう。

拡大ホワイトハウスで記者団からの質問に答えるトランプ米大統領=2018年11月26日、ワシントン

 欧州連合(EU)は1993年のマーストリヒト条約によってつくられ、現在28ヵ国が参加しているが、周知のように、イギリスが2016年6月の国民投票でEU離脱を決めている。当時のデーヴィッド・キャメロン首相はEU残留を支持していたが、国民の52%が離脱を選択したのだった。離脱選択の最大の原因は難民の流入だったと言われている。EU域内では、ヒト・モノ・カネの流通が自由なので、多くの難民がイギリスに流れ込み様々な問題を引き起こしたのだった。

 イギリスだけではなく、EU離脱を主張する政党が大陸ヨーロッパ諸国でも増加してきている。イタリアではEU離脱を主張する5つ星運動が同盟と連立し政権を担うことになった。5つ星運動は有名な芸人ベッペ・グリッロによって設立された政党だが、急速な躍進を遂げ、ついに政権を獲得するに至ったのだ。政権獲得後はEU離脱の主張はトーンダウンしEUにとどまっているが、難民問題がもたらした政権の交代だったということができるのだろう。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は積極的に移民・難民を受け入れてきたが、それが主たる理由で人気が凋落していると言われている。2021年の任期切れとともに退任すると表明しているが、それまでその席にとどまれるかどうかも不透明な現状なのだ。現在、社会民主党(SPD)と連立を組んでいるが、SPDが連立を離脱して総選挙が実施されれば引退の日はもっと早く訪れるだろうとされている。

 メルケル首相を苦境におとしめた1つの原因は、移民・難民の排除や反EUを掲げている「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭だ。AfDは2017年9月のドイツ連邦議会選挙で94議席を獲得し野党第1党となったのだった。2018年9月の時点では支持率は18%となり、大連立与党でドイツの2大政党である社会民主党(SPD)を抜いて国政支持率2位となっている。

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筆者

榊原英資

榊原英資(さかきばら・えいすけ) 青山学院大学特別招聘教授、エコノミスト

1941年生まれ。東京大学経済学部卒、1965年に大蔵省に入省。ミシガン大学に留学し、経済学博士号取得。1994年に財政金融研究所所長、1995年に国際金融局長を経て1997年に財務官に就任。1999年に大蔵省退官、慶応義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、2010年4月から青山学院大学教授。近著に「フレンチ・パラドックス」(文藝春秋社)、「ドル漂流」「龍馬伝説の虚実」(朝日新聞出版) 「世界同時不況がすでに始まっている!」(アスコム)、「『日本脳』改造講座」(祥伝社)など。

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