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小林喜光が読むハラリの「ホモ・デウス」

超エリート以外は負け組になる残酷な格差社会を我々はどう生き抜くのか

諏訪和仁 朝日新聞オピニオン編集部記者

超エリート以外は負け組になる残酷な格差社会

 ハラリの見通しはこうだ。2045年にコンピューターのAI(人工知能)が人間の知性を追い抜く。あらゆるところにロボットが使われ、人間の働く場が狭まっていく。その理由は、コンピューターが「賢く」なるからだ。今のシリコン系の半導体を使ったコンピューターではなく、処理速度が格段に上がると言われる量子コンピューターなどが使われるようになれば、AIは機械学習や深層学習で加速度的に賢くなっていく。やがて人間が考えること、思うことが、すべてAIのアルゴリズム、計算式のようなものだが、これですべて処理できるようになる、というのだ。

 すでにアルゴリズムが人間の知能を凌駕した分野が囲碁だ。グーグルの子会社が開発したAI「アルファ碁」は天才棋士に勝った。今後は人間の持つ「愛」や「感情」のような意識もAIが持てるようになるだろうと言われている。AIが人間と同じようになると、人間のやっていることどころか、人間そのものが何なのか、という哲学的な問題になっていく。

 データイズムでは結局、AIで活用するビッグデータを持つGAFAやBATJのような巨大IT企業を動かす一握りの超エリートが世界中の富を得てしまう。インテリたちはデータイズム、すなわちビッグデータを持った者が勝つと分かり始めている。日本には、データを集められる社会インフラを持つプラットフォーマーがいない。アメリカや中国に完全に負けている。

 とくに中国は政治の決定スピードが速く、すべてデータを吸い上げられる。データは、いろんなデータが分散しているより、1カ所に集めて使った方が圧倒的に効率がいい。データは独裁と親和性が高いのだ。一方、アメリカやヨーロッパ、日本など民主主義の国は何か決めようとしたら時間がかかってしまう。

 データイズムでは、極めて残酷な格差社会になるだろう。超エリート以外の大勢は負け組になるからだ。

 ハラリはこの負け組を「ユースレス・クラス」と呼ぶ。「意味のない階級」「無駄な階級」という意味だ。この人たちが生活できるように、カナダやフィンランドで実験しているようなベーシックインカム(BI)が必要だと言っている。AIの時代こそBIなのだ。放っておくと、こんな暗い世の中になってしまうかも知れないから、今何をすべきかと問いかけている。デジタル時代に人間はどう生きていけばいいのかということだ。

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 かつて、マルクスが「共産党宣言」に「一匹の妖怪がヨーロッパを徘徊している。共産主義という妖怪が」と書き、労働者階級と資本家階級の対立を描いた。今はそんなのんきなものではない。データイズムという妖怪が世界を徘徊している。我々は大変な革命期に生きているのだ。

 データイズムで、GAFAのようなデジタルデータのプラットフォーマーが、一握りの超エリートとユースレスクラスに分けてしまうかも知れない。そうならないように19年1月のダボス会議では、社会経済システムを変えていかなければならないという問題意識で議論になると思う。

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筆者

諏訪和仁

諏訪和仁(すわ・かずひと) 朝日新聞オピニオン編集部記者

1972年生まれ。1995年に朝日新聞社入社、東京経済部、大阪経済部などを経てオピニオン編集部記者。

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