原真人(はら・まこと) 朝日新聞 編集委員
1988年に朝日新聞社に入社。経済部デスク、論説委員、書評委員、朝刊の当番編集長などを経て、現在は経済分野を担当する編集委員。コラム「多事奏論」を執筆中。著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論 バブル・成長信仰・アベノミクス』(朝日新書)、『経済ニュースの裏読み深読み』(朝日新聞出版)。共著に『失われた〈20年〉』(岩波書店)、「不安大国ニッポン」(朝日新聞出版)など。
日本は低成長・低インフレで十分やっていける国だ。「成長教」と決別を!
「高度成長の夢よ、再び」と言われても、今の日本ではどれほどの人が真に受けるだろうか。しかし、そんな掛け声がどうやら政府や経済界でこだましているようだ。
2025年の「大阪万博」開催が決まった。大阪府の松井一郎知事が中心となって誘致運動を展開。安倍政権や建設業界など経済界の一部も歓迎している。
2020年の東京五輪・パラリンピックが開催されたあとの景気の落ち込みが予想されており、その後のてこ入れ策として新たな対策の目玉になると期待されているようだ。
それにしても〈五輪・万博〉セットをこの時代に日本で再び実現することになるとは思わなかった。以前に開催したのは、東京五輪が1964年10月、大阪万博は1970年3~9月。高度成長の末期、まだまだ日本が発展途上の時代だった。
いまで言えば日本は新興国のようなものだった。だからオリンピックや万博の開催という「きっかけ」をバネにして、どうせ造ることが必要な道路や鉄道、施設を整備することには道理があった。
だが、日本が成熟国となり、高齢化社会、人口減少社会となっているいま、そのような「きっかけ」は必要ない。新たなインフラが必要な時代ではなく、むしろ人口減少に合わせてダウンサイジングすべき時期なのである。
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